はじめて意識的にSFを接種しました。
SFってやっぱり難しいしとっつきにくいところがあるし、SFファンじゃないとSFを語るな!みたいな排他的な感じがある。「バーナード嬢曰く。」の神林さんみたいな。
もちろん星新一は読んだことあるし、「時をかける少女」の
映画も見たことある。でも『SF』という大看板を掲げている作品を「これからSFを読む!」という意識で読んだことはなかった。
SFの名著ランキングで必ず上位に入る『あなたの人生の物語』、やはりこのタイトルに惹かれて読み始めました。
一冊まるごと「あなたの人生の物語」かと思ってたんですけど短編集でした。
最初の章が、旧約聖書の時代の話で、SFって過去の話もありなんだ、と驚く。
いろんな話を読み続けていくうちに、「これがSFか!」という気持ちになる。
いままで読んでたのはSFじゃなかった! みたいな
SF好きって、SFがとにかく好き、っていうイメージがあるんだけど、SFでしか得られない体験がある。
読書というのは他人の人生を体験するものだ、ということを多くの人が言うけどピンと来てなくて。
でもSFの超次元的な話を読んで、「これは自分では体験できない! まさに他人の人生を体験している!!」という気持ちになりました。
ただ、どうしても短編集って短いから「俺たちの戦いはこれからだ!」みたいなところで終わってしまう。
そんななか「地獄とは神の不在なり」という短編に度肝を抜かれました。
完璧すぎて。
100-100=0
みたいな話だった。
100のストーリーを100回収する。あとには0が残る。この0は美しい0。なにもない、0.001残っているわけでも、マイナスに振れてしまうわけでもなく、まっさらな地平の0。
短編8編のなかで「地獄とは神の不在なり」が圧倒的に優れていて、でもこの本のタイトルが「地獄とは神の不在なり」だったら手にとっていなかっただろうなあと思いました。
『あなたの人生の物語』というタイトルは素晴らしい。
SFに魅了されたなあ。
これまで味わったことのない読書体験だ。
SF好きが熱心な理由がわかった。SFでしか接種できないものがある。
次は一冊まるごと同じテーマで書かれたSFが読みたい。
一九八四年、夏への扉、アンドロイドは電気羊の夢を見るか?、星を継ぐものあたり。
三体は重厚すぎるので文庫化されたら読みたい。