歴史学者・網野善彦の晩年の対談集。民俗学者の宮田登との3度にわたる対談を収録している。原著は1998年に出たもので、2012年に新書、2020年に文庫として3度も刊行されているところを見ると、根強い読者がいることがうかがえる。冒頭は、1度目の対談が行われた年に公開され、大ヒットした映画「もののけ姫」について語っている。エミシの少年、非稲作社会、女性だけのたたら場といった世界観は網野の歴史観をふんだんに取り入れているという。他にも直木賞受賞の坂東真砂子の「山妣(やまはは)」や、徳川政権が確立しつつあった江戸初期の常陸国の神田の惨劇を描いた飯嶋和一「神無き月十番目の夜」など、民俗について重厚に描かれた作品が近年増えていると語らっている。少し古い対談で、学者世界への愚痴や放談めいたところもあるが、例えば中世からしっかりと確立していた女性の所有権、相続の権利、養蚕で得た金銭などへの言及があり、飽きさせない。河原などで石を投げ合う、礫(つぶて)の習慣が古い時代からあったため、日本では速やかに野球が普及した、というのは放談だろうがおもしろい。1gあたりの熱量が最も高い穀物であるコメ、稲作を日本では神聖視してきて、学問の世界でも百姓=コメ農家という点に疑問を抱かなくなっているが、コメ農家は農家の半分であり、残りには炭焼きや林業、麦作や養蚕といった多彩な農家が今も昔もある。そして農家以外にも製鉄や製陶業、輸送業や漁業、行商など、多彩な営みが今も昔も各地にある。そういう当たり前の事実に改めて考えさせてくれる対談集だ。
先日読んだ『占領と性』にめちゃくちゃ打ちのめされまして
あの本は「研究の半ば」ということを書かれていて、その後の研究はどうなったんだろうと『占領と性』を書かれた恵泉女学園大学平和文化研究所を調べても …続きを見る
近藤聡乃さんのニューヨークでの暮らしを綴ったコミックエッセイ。
二巻の中盤で、ニューヨークで出会ったアメリカ人の恋人と結婚するんだけど、同じ国際結婚を描いていても、『ダーリンは外国人』と『ニューヨー …続きを見る
前作『結ぼれ』は主に2人の会話から成っている作品でしたが、本作はモノローグ、ダイアローグ、そして詩から成っています。
その詩の訳が韻を踏みまくっているので、元の本も韻を踏みまくった詩になっているんで …続きを見る
西尾維新読者は西尾維新を信用していない。
それはつまらないとかそういう意味ではなく、主人公が抱いている感情や、登場人物たちの発言や、繰り広げられている舞台そのものが嘘である、という意味で。
だから …続きを見る
『センネン画報』大好きです。切なくて詩的で……読む青春です。
『センネン画報 +10 years』が、センネン画報1と2を合体させたものだと思っていたのですが、
『センネン画報 +10 years …続きを見る
みんな大好きアンナマガジンです。この号は2014年に発売されたこともあって、今のアンナマガジンのカラーとは全然違いますね。昔のPOPEYEっぽい。フォトジェニックな写真を撮ろうとしている。フォトジェニ …続きを見る
コーネリアスの写真集、ヒストリーインタビュー、コーネリアスが1000曲を選出したプレイリストに基づくインタビューで構成されいてる30周年記念ライブのパンフレット
インタビュアーはばるぼらさん
イン …続きを見る
もともとはツイッターで話題になった漫画。それを単行本のために全部リライトして、大幅に加筆して『作品』として形にしたのがこの本です。
ツイッターで流れてくるマンガの一部や、この本のタイトルや表紙の雰囲 …続きを見る