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2021/11/19
犬神持ちとされている血筋の家で育った美希は、実は10代の頃、それとはしらずに実兄と肉体関係を持ち、彼に裏切られた上に、子供は死産したとされてきた。そして40歳を過ぎた頃、美希の住む村の中学校に青年が赴任してくる。実はこの青年こそ…といったあらすじだ。最後は凄惨な終わり方になるが、それに至るまでの村社会特有の閉鎖的なところや噂がすぐに広まるところ、所帯のない美希の、家にも村にも居場所もないところ、村八分とされ差別されていく一族…といった描写が実によくできていて、あっという間に読める。犬神とは小さな虫のようなもので、代々一族の女の一人が管理し、壺の中などに入れて治めておくと一族は繁栄するが、それが村人に憑いてしまうと、その人は精神不安定となり悪夢をみるようになる…といったものだそうだ。全くの迷信であるが、今でも西日本の一部地域では信じられているというから、日本は狭いようで広いというか、広いようで狭い村社会が多数現存しているというか。今もネットで俗信が広まり、他者を差別する構図は変わっていないような気がするのだが、どうだろうか。
こちらは「死国」の次の作品で「死国」同様に高知の山村が舞台で、映画化もされているホラー・民俗小説だ。
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