/
2021/11/19
犬神持ちとされている血筋の家で育った美希は、実は10代の頃、それとはしらずに実兄と肉体関係を持ち、彼に裏切られた上に、子供は死産したとされてきた。そして40歳を過ぎた頃、美希の住む村の中学校に青年が赴任してくる。実はこの青年こそ…といったあらすじだ。最後は凄惨な終わり方になるが、それに至るまでの村社会特有の閉鎖的なところや噂がすぐに広まるところ、所帯のない美希の、家にも村にも居場所もないところ、村八分とされ差別されていく一族…といった描写が実によくできていて、あっという間に読める。犬神とは小さな虫のようなもので、代々一族の女の一人が管理し、壺の中などに入れて治めておくと一族は繁栄するが、それが村人に憑いてしまうと、その人は精神不安定となり悪夢をみるようになる…といったものだそうだ。全くの迷信であるが、今でも西日本の一部地域では信じられているというから、日本は狭いようで広いというか、広いようで狭い村社会が多数現存しているというか。今もネットで俗信が広まり、他者を差別する構図は変わっていないような気がするのだが、どうだろうか。
こちらは「死国」の次の作品で「死国」同様に高知の山村が舞台で、映画化もされているホラー・民俗小説だ。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
証言モーヲタ ~彼らが熱く狂っていた時代~ 吉田豪
いまから約20年前のモーニング娘。全盛期のオタクたちのインタビューまとめ本
劔樹人や宇多丸といった業界人からサムライ、ピストルといった一般トップオタまで幅広くインタビュー
モーニング娘。全 …続きを見る
川瀬巴水作品集 増補改訂版 川瀬巴水, 清水久男
川瀬巴水という版画家をみなさんご存知ですか? 僕はつい最近まで知りませんでした
ジョブズの本だかAppleの歴史だかを読んで、ジョブズが川瀬巴水というを愛していたこと、来日してはそのたびに川瀬巴水 …続きを見る
ILLUSTRATION 2017 平泉康児
前号の2016で「新人を発掘し始めた」って書いたんですけど、この年は思いっきり新人ばっかりですね。2013年の号は絵画だったり、イラストだったり、チープアートだったり、その界隈で伝説級の人ばかりが載っ …続きを見る
ロッキング・オン天国 増井修
洋楽誌『ロッキング・オン』の編集長を1990年から96年にわたり勤めてきた増井修さんの解雇エッセイならぬ回顧エッセイ。
増井修ファンはロッキング・オンとの裁判の経緯が知りたいところだろうけど、そのあ …続きを見る
新版 近藤聡乃エッセイ集 不思議というには地味な話 近藤聡乃
近藤聡乃さんが2011年から2012年にブログに書いていた文章を書籍化したもの。もちろん書籍化される前提で書かれたものではなく、ファンに対しての近況報告だったり、近藤聡乃さん個人の備忘録に近い。
だ …続きを見る
Casa BRUTUS特別編集 猫と家。 Casa BRUTUS
建築段階からキャットウォークやペットドアなどを組み込み、猫が自然と楽しめる家を作った人たちの施工事例集
それをCasa Brutusのセンスのいい誌面で見せる
最高です
こんな本、ほかにあるのか …続きを見る