村上春樹のオススメ本シリーズ
アルゼンチンのバジェホスという町の1933年から1948年の記録。群像劇。
ある家庭では子供が生まれ15歳になり、ある家庭では女の子が結婚し、ある者は都市に行き、ある者はこの町に帰ってくる。
文すべてが登場人物の会話、独白、日記で構成されており、第三者目線の文は登場しない。
それも一章がまるまる会話、一章がまるまる日記、という形式。
しかも会話の章では5人くらいの人物が登場し、発声した順に記載されているものだから、誰がなにを言っているのかわからない。
例えばこんな具合
「おじいさん、鶏を締めるなら言ってよ」
「あの映画はあの子の好みだろうね」
「このテーブルクロスきれいね」
「鶏を締めるところを見るのが嫌いかと思ってね」
「これ縫うの大変だったのよ」
みたいな、Aグループと、その近くにいるBグループの会話が並列に記載されているような感じ。
でもこの雑多な感じがその町の生活をトレースしているようで楽しい。
ファミレスで交わされるすべての会話が可視化されているようなイメージ。
この小説にはドラマチックな出来事もエンターテイメントも存在しない。
あるのは1930年代に暮らした人々の生活だけ。それぞれの語り口からそれぞれの立場を想像しそれぞれの生活やアルゼンチンの風土を読み解いていく、感じる小説。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
ことばのしっぽ – 「こどもの詩」50周年精選 読売新聞生活部
読売新聞に寄せられた、中学3年生までが応募資格を持つ「こどもの詩」50年分ををまとめたもの
大人には書けない詩ばかり
こどもの自由な発想に驚く
どんな詩が載っているか、ちょっと引用しますね
…続きを見る
好き? 好き? 大好き?―対話と詩のあそび R.D. レイン, 村上光彦
前作『結ぼれ』は主な2人の会話から成っている作品でしたが、本作はモノローグ、ダイアローグ、そして詩から成っています。
その詩の訳が韻を踏みまくっているので、元の本も韻を踏みまくった詩になっているんで …続きを見る
ニッケルオデオン 赤 道満晴明
道満晴明は唯一無二である。そして天才である。異論は認めない。彼が紡ぎ出すこのショートショートの世界は誰にも真似できない。胸キュンもシュールもBLもキチガイもグロもユーモアも全てが詰まった8ページ13編 …続きを見る
影との戦い ゲド戦記 アーシュラ・K.ル=グウィン, 清水真砂子
読んだ第一印象としては「ハリポタみたいだなあ」でした
もちろんこっちのほうが古いんだけどね
ゲド戦記といえば日本ではジブリの映画が有名で、その映画がつまらないことも有名で、それと同時に語られるのが …続きを見る
On Kawara: Date Paintings in 89 Cities on Kawara, Karel Schampers
河原温というアーティストのすごさを最近知りました
河原温のdate paintingはだいぶ前に東京都現代美術館ですでに見ていて、面白い作品だなーという記憶がありました
つい最近まで存命だった …続きを見る
アメリカの鱒釣り リチャード・ブローティガン, 藤本和子
村上春樹のオススメ本シリーズ。
とんでもなく面白かったですねえ。
日記、エッセイ、空想、小説……小説?
小説なの?
詩人であるブローティガンの文章は幻想的だ。
また、日本人にはできない言 …続きを見る
AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争 庭田杏珠, 渡邉英徳
戦前・戦時中のモノクロ写真をAIの力でカラー化した写真集です。前書きにも書いてありますが、カラー化の技術向上には終わりがなく、この本に載っている写真は完成品ではなく、「2020年現在の成果物」です。確 …続きを見る
SDガンダム SDガンダム外伝メモリアルブック 栗原昌宏
本を読まなくちゃいけないんだけど、小説とかはキツイ。そんなときはデータ集を読むに限る。SDガンダムのカードダスのストーリーと、カードの線画を集めた本です。ギッチギチに情報が詰まっててボリューミー。
…続きを見る
アルジャーノンに花束を ダニエル・キイス, 小尾芙佐
日本でも大ヒットして、ドラマ化もされましたね
とにかく泣けるって情報だけ知ってて、アルジャーノンって女の子が死ぬ話なのかなって思ってました
めちゃくちゃおもしろかったです
面白かった本に …続きを見る
きみのまち 歩く、旅する、書く、えがく 今日マチ子
コロナ禍の日々を「わたしのstayhome日記」として発表し続けてきた今日マチ子さんが、コロナが開けてようやく旅行に出かけた台湾での絵と文章での記録
今日マチ子さんにとって初のエッセイ集らしい
…続きを見る