江戸時代末期、高知県の山間部の農村を舞台に、狗神憑きとみられる集団ヒステリーが起きた。踊り狂うのは、いずれも貧しい小作人ばかり。その狂乱の推移が村の娘みつと庄屋の老旦那、そして派遣された武士たちの目線で描かれるミステリー、ホラーといった小説だ。狂乱の原因とされたのは狗神憑きだったと言われるが、憑かれた者たちは途中から狸が憑いていると言い出したり、結局のところはなんだったのか最後までわからない。だが江戸幕府が200年以上続いたにも関わらず、農村の人々が貧しいまま、土地に縛り付けられていたことが事件の一因になっていたのではないかと、国学者平田篤胤を慕う下級武士を通じて作者は語っている。というのも、信じられないようなこの事件は、実際に土佐の山中で起きており、それが複数の史料に書かれていると作者ははじめに書いており、その事件がなぜ起きたのか、作家ならではの想像力、飛躍力をもって当時の事件を再構築しているのだ。農民の貧しい暮らしぶりや、決まった時刻に毎日集団で狂い出す様などが写実的で、庄屋や下級武士たちの苦悩も今とそんなに変わらない。小作人たちが餓死するほどの飢饉が、米がほとんど穫れない山中の村にまで及んでおり、その劣悪な暮らしから逃れようとしたり、一揆を起こしたり、果ては尊皇攘夷思想が階級を問わず広がっていく様子が描かれる。狗神憑きや村八分、俗信や噂に満ちた山村でありながら、明治維新後、土佐出身の自由民権運動理論家・植木枝盛は同じ土地を「自由は土佐の山間より出づ」と讃えた。そうした時代の転換期に起きた、「ええじゃないか」の乱舞にも通じるような事件を描写した小説だ。
2008年に行われた「井上雄彦最後のマンガ展」の図録。先日の井上雄彦本を読んで、井上雄彦熱が高まったのでメルカリで購入。メルカリは便利だ。出品のハードルが低いから、これまで埋もれていた商品がいっぱいで …続きを見る
発生当時、ネットでは犯人の写真から「NEVADAたん」と呼ばれていた事件を追った本
この事件の被害者の女生徒は毎日新聞の地方局局長の娘さんで、彼の部下で日々新聞を作っていた記者が記録した激動の日々
…続きを見る
ロサンゼルスからニューヨークまでアメリカを横に縦断するという、ひとつの到達点のような号。すごいのは、めちゃくちゃ治安の悪いデトロイトの廃墟とアンテロープキャニオンの神秘的な自然を同じ雑誌に載せていると …続きを見る
著者は日本中世史の学者・網野善彦。といっても、日本史学の本流である政治史ではなく、中世から近世にかけての漁民や流通に従事した名もなき人々や、寺社の清掃や牛馬を扱う人々などを研究していた、言ってみれば異 …続きを見る