/
2021/10/29
自分はいままでなんて無意味な本ばかり読んできたのだろうと、この本に込められた圧倒的な意思にうちひしがれました。
宗教、恋愛、心理、階級、犯罪、裁判、家族、金、ここには書ききれないほどのあらゆるテーマを内包しているから、完全な感想を書くにはそれらすべてを踏まえなくてはならないので原稿用紙20枚くらい欲しいところなんですが、
1800年代のロシアでのキリスト教の世界観をベースにしながら、人間模様や争い、医学の未発達による病気や死といった当時のロシアそのものの社会が描かれ、詳細な情景は思い浮かべるのが難しいながらも、時間や距離を越えた世界をありありと感じることができます。
そしてキリスト教的な宗教小説かと思いきや人間の欲情や妬みなどにも発展していき、最終章のあの空間での結末に、人間の心理すべてが描かれていると思いました。
主人公たちだけの心理だけが詳細に描かれているのではなく、登場人物すべての心理が丁寧に描かれ、それが小説ではなく実話ノンフィクションのような世界。
なぜドストエフスキーは人の心をこうも実話のように描けるのか。最後の解説を読むまでノンフィクションとすら思い込んでいました。
でもこの本が素晴らしいのは人間の心理を実話のように描いているからではなく、もっと大きなテーマ、言ってしまえばこの本のすべてが素晴らしいのです。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
ホークライン家の怪物 リチャード・ブローティガン, 藤本和子
ブローティガンが『アメリカの鱒釣り』の13年後に書き上げた小説。
これまで読んできたどのブローティガン作品よりも小説としての色合いが強い。
一般の作家ならこれは普通の小説だけど、ブローティガン …続きを見る
Million Onion Hotel「秘蔵の開発ノート」 OnionGames
かつて「moon」という伝説のRPGを作ったUFOチームのメンバーが作った「Million Onion Hotel」というゲームアプリの開発ノート。
まぎれもなくUFOチームは天才集団で、でも寡作で …続きを見る
星を継ぐもの ジェイムズ・P・ホーガン, 池央耿
面白い本はネタバレを極力せずに感想を書きたい
2週間くらいかけてゆっくりと読みました。
ちょうど読み進めているときに、この「『星を継ぐもの』シリーズ未翻訳の作品の発売が決定!」というニュー …続きを見る
タミヤ公式 ミニ四駆 パッケージアートコレクション 下 タミヤ
こっちの下巻に掲載されているミニ四駆がわたしの世代ドンピシャ
レッツアンドゴー世代ど真ん中
相変わらず最高です
パッケージアートコレクションだから、コロコロコミック読者全員プレゼントのメタリック …続きを見る
藤田幸久式モデリングマニュアル―雑多えんたあていめんと。 藤田幸久
先日読んだU井T吾さんのルーツが藤田幸久さんの描かれていた『プラモのモ子ちゃん』にあると知って、藤田幸久さんの本を読んでみました。
『プラモのモ子ちゃん』は版権の関係か書籍化されておらず、藤田幸久さ …続きを見る
良いコミックデザイン KT
漫画の優れた装丁を集めた本。著者は、毎年ブログで「この装丁がすごい!」を発表しているKT氏。デザインスキーにとってはたまらない本です。
こういう本って、第三者の目から見ても「いい!」と思えるものが載 …続きを見る
令和元年のテロリズム 磯部涼
「川崎市中1男子生徒殺害事件」をきっかけに川崎の不良や在日といった暗部と、そこから這い上がり連帯する人々を描いた「ルポ川崎」の著者・磯部涼が、登戸の殺傷事件、それに触発された元農林水産省事務次官による …続きを見る