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2021/10/29
自分はいままでなんて無意味な本ばかり読んできたのだろうと、この本に込められた圧倒的な意思にうちひしがれました。
宗教、恋愛、心理、階級、犯罪、裁判、家族、金、ここには書ききれないほどのあらゆるテーマを内包しているから、完全な感想を書くにはそれらすべてを踏まえなくてはならないので原稿用紙20枚くらい欲しいところなんですが、
1800年代のロシアでのキリスト教の世界観をベースにしながら、人間模様や争い、医学の未発達による病気や死といった当時のロシアそのものの社会が描かれ、詳細な情景は思い浮かべるのが難しいながらも、時間や距離を越えた世界をありありと感じることができます。
そしてキリスト教的な宗教小説かと思いきや人間の欲情や妬みなどにも発展していき、最終章のあの空間での結末に、人間の心理すべてが描かれていると思いました。
主人公たちだけの心理だけが詳細に描かれているのではなく、登場人物すべての心理が丁寧に描かれ、それが小説ではなく実話ノンフィクションのような世界。
なぜドストエフスキーは人の心をこうも実話のように描けるのか。最後の解説を読むまでノンフィクションとすら思い込んでいました。
でもこの本が素晴らしいのは人間の心理を実話のように描いているからではなく、もっと大きなテーマ、言ってしまえばこの本のすべてが素晴らしいのです。
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