/
2023/12/06
本書は私小説であり、私小説を辞書で引くと「作者自身の経験や心理を虚構化することなく、そのまま書いた小説」とあります。
私小説に限らず小説全般においてもっとも難しいのが「そのまま書く」という点です。
自分のことが風呂も入ってなくて悪臭がする、ということを表現したいときに、汚物のように臭いだとか、電車で周りから人がいなくなるとか、どうしても人は脚色してしまうものです。モノを誉めるときの常套句の「控えめに言って最高」とか、小説書きからしたら興ざめするようなクソダサ文章なわけです。
汚さ、不潔さを西村賢太が書くとこうなります。
朝勃ちした竿に指で角度をつけ、築100年の年中悪臭がする共同便所で尿を放ち、手も洗わずタオルケットに腹這いになり、ハイライトをふかす。昨日と同じ汗臭いTシャツを着てジーンズを履き、汚れたままの作業着が入った紙袋を掴んで家を出る。
リアル。そのまま。脚色もなにもなく、でも主人公の汚さはありありと伝わってくる。
その描写力と、主人公のどうしようもなさがすごい。性格が悪すぎてクズすぎる。読んでて嫌な気分になる。でもそれをすべてさらけ出せる西村さんがすごい。人生小説家ともいうべき。クズの人生なのに打ちのめされる。勝てない。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
POPEYE 2019年 2月号 [本当にいい部屋ってなんだろう?] POPEYE
お馴染みPOPEYEの部屋特集2019年版です。約50部屋くらい掲載されていて楽しい。
「本当にいい部屋ってなんだろう?」というテーマなんだけど、その答えはどこにも書いてないんですよね。「答えは自分 …続きを見る
サードドア: 精神的資産のふやし方 アレックス・バナヤン, 大田黒奉之
けんすうさんがおすすめしていたので読んでみました
進路に悩んだアメリカのとある大学生が「ビル・ゲイツやザッカーバーグなど、大学生の時からすごかった人はなにを考えていたんだろう。そうだ! インタビ …続きを見る
世界のシティ・ガイド CITIX60シリーズ アムステルダム 和田侑子
アムステルダムに住むクリエイターやアーティストたちが、アムステルダムの観光名所やレストラン、お店、ナイトスポットなどを現地に住む人ならではの視点で教えてくれる観光ガイド本。
POPEYEの街ガイドの …続きを見る
イリヤの空、UFOの夏 秋山瑞人
セカイ系を代表する名作
『最終兵器彼女』と同じだなと思いながら読んだんですが、『最終兵器彼女』に影響を受けて書かれたものらしいです
こんなまんまでも世間から大歓迎されたんですね
最終兵器彼女のノ …続きを見る
BRUTUS特別編集 合本・居住空間学 COLLECTION BRUTUS
部屋や家、インテリアの本が好きです。BRUTUSの家本ならまあ間違いはないですよね。casa BRUTUSっていう建築だけの雑誌もやってるし。楽しく読みました。いいなあ~憧れるなあ~って。
ただね、 …続きを見る
愛のゆくえ リチャード・ブローティガン, 青木日出夫
リチャード・ブローティガンのなかでももっとも長く、小説らしい作品。
巻末に高橋源一郎さんのコラムが載っていて、高橋さんはブローティガンのなかでもこの『愛のゆくえ』が一番好きらしい。
舞台は図書 …続きを見る
ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活 佐藤友理, 落合加依子
一人暮らしをしている100人の部屋の写真と、部屋にまつわるエッセイ
部屋本のフォーマットは『TOKYO STYLE』が強すぎると思っていたけれど、別の解法があるんだな、と思いました
エッセイがある …続きを見る