/
2023/02/02
近藤聡乃さんが2011年から2012年にブログに書いていた文章を書籍化したもの。もちろん書籍化される前提で書かれたものではなく、ファンに対しての近況報告だったり、近藤聡乃さん個人の備忘録に近い。
だからすごくリラックスした文章で、タイトルにもある通り地味な話ばかり。
だけれども、読んでいると記憶の扉が開きまくってくる。脳のトリガーみたいな役割を持っている。
本書には、近藤聡乃さんの幼少期の頃の記憶をテーマにしたエッセイが頻出する。
その、近藤聡乃さんの記憶が、私個人の記憶と結び付くのだ。
これは、私と近藤聡乃さんの年齢差が10歳以内というのもあると思う。
あるエッセイで、「紫陽花の根元を見ていたら、猫の死体があった」という一節が出てくる。
たぶん、この紫陽花の周りの空気の色は、あの時代のあの色なのだと思う。周りの建物も地面も、あの時代のあの色のものなのだと思う。
それは、いま20歳くらいの人が想像で思い浮かべる光景とは、どうしても違うものなのだ。
そんな、近藤聡乃さんの子供の頃の記憶の描写を見るたびに、「そういえば蟹の死骸が自転車置き場の間に落ちていたな」とか、「体育館に県を代表する美術家の絵が飾ってあったな」とか、自分でも忘れきっていた記憶の扉がバンバン開いていく。
本自体はなんの変哲もないものなんだけれども、記憶を開く鍵として持っておきたい。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
古文書返却の旅――戦後史学史の一齣 網野善彦
著者は日本中世史の学者・網野善彦。といっても、日本史学の本流である政治史ではなく、中世から近世にかけての漁民や流通に従事した名もなき人々や、寺社の清掃や牛馬を扱う人々などを研究していた、言ってみれば異 …続きを見る
Essential わたしの#stayhome日記 2021-2022 今日マチ子
描くことは祈り
2020年4月の緊急事態宣言以降、ソーシャルディスタンスが当たり前になっていく人々の様子、街の様子を、丁寧に、静かに描き続けている今日マチ子さん。
2021年4月ー20 …続きを見る
保護中: お前を絶対に救済するからな! 『偽物協会』白井もも吉インタビュー!! 白井もも吉
現役女子高生作家という肩書で華々しくデビューするも、以降8年もの間、商業誌連載から遠ざかっていた漫画家・白井もも吉。
8年の時を経てカムバック作となった『偽物協会』は白井もも吉の進化が存分に宿った総 …続きを見る
SDガンダム SDガンダム外伝メモリアルブック 栗原昌宏
本を読まなくちゃいけないんだけど、小説とかはキツイ。そんなときはデータ集を読むに限る。SDガンダムのカードダスのストーリーと、カードの線画を集めた本です。ギッチギチに情報が詰まっててボリューミー。
…続きを見る
ニッケルオデオン 赤 道満晴明
道満晴明は唯一無二である。そして天才である。異論は認めない。彼が紡ぎ出すこのショートショートの世界は誰にも真似できない。胸キュンもシュールもBLもキチガイもグロもユーモアも全てが詰まった8ページ13編 …続きを見る
HERE ヒア リチャード・マグワイア
『バーナード嬢曰く。』という読書マンガがありまして。作者がSF読みだからSFの本ばかり紹介されるんですけど、このリチャード・マグワイアの『HERE』は絵本みたいで読みやすい、とのことだったので挑戦して …続きを見る
BRUTUS特別編集 合本・居住空間学 COLLECTION BRUTUS
部屋や家、インテリアの本が好きです。BRUTUSの家本ならまあ間違いはないですよね。casa BRUTUSっていう建築だけの雑誌もやってるし。楽しく読みました。いいなあ~憧れるなあ~って。
ただね、 …続きを見る