/
2023/02/02
近藤聡乃さんが2011年から2012年にブログに書いていた文章を書籍化したもの。もちろん書籍化される前提で書かれたものではなく、ファンに対しての近況報告だったり、近藤聡乃さん個人の備忘録に近い。
だからすごくリラックスした文章で、タイトルにもある通り地味な話ばかり。
だけれども、読んでいると記憶の扉が開きまくってくる。脳のトリガーみたいな役割を持っている。
本書には、近藤聡乃さんの幼少期の頃の記憶をテーマにしたエッセイが頻出する。
その、近藤聡乃さんの記憶が、私個人の記憶と結び付くのだ。
これは、私と近藤聡乃さんの年齢差が10歳以内というのもあると思う。
あるエッセイで、「紫陽花の根元を見ていたら、猫の死体があった」という一節が出てくる。
たぶん、この紫陽花の周りの空気の色は、あの時代のあの色なのだと思う。周りの建物も地面も、あの時代のあの色のものなのだと思う。
それは、いま20歳くらいの人が想像で思い浮かべる光景とは、どうしても違うものなのだ。
そんな、近藤聡乃さんの子供の頃の記憶の描写を見るたびに、「そういえば蟹の死骸が自転車置き場の間に落ちていたな」とか、「体育館に県を代表する美術家の絵が飾ってあったな」とか、自分でも忘れきっていた記憶の扉がバンバン開いていく。
本自体はなんの変哲もないものなんだけれども、記憶を開く鍵として持っておきたい。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
Casa BRUTUS特別編集 時代を超えて愛される、デザインの良い車。 Casa BRUTUS
現在でもデザイン的に引けを取らない名車を集めた本
表紙のワーゲンゴルフをはじめ、ルノー 4やフィアット500など、みんなが納得する名車ばかりがラインナップ
旧車とまではいかない80~90年代の車が …続きを見る
メディアはマッサージである: 影響の目録 マーシャル・マクルーハン, クエンティン・フィオーレ
スペクテイターという雑誌でマクルーハンという人物を知りまして。一大旋風を巻き起こしたという彼の著作を読んでみたいなと思って読んでみました。
サンプリングで作られた本。文章だけでなく写真やイラストも大 …続きを見る
THE北斎 冨嶽三十六景ARTBOX すみだ北斎美術館(奥田敦子), 葛飾北斎
ゴッホとか西洋画が好きなくせになんでゴッホに影響を与えた北斎や浮世絵をちゃんと見てこなかったんだろうと思って北斎美術館に行きました
で、葛飾北斎による浮世絵は、表紙にある有名な富嶽三十六景以外に …続きを見る
ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で ジョン・M・マグレガー, 小出由紀子
点数をつけるのが不可能
ヘンリー・ダーガーはもちろん存在は知っていましたが、はじめてその作品を見ました
孤高のアーティストという響きだけを聞くと、その作品になにか神秘的なものを感じてしまうけど …続きを見る