/
2021/10/29
自分はいままでなんて無意味な本ばかり読んできたのだろうと、この本に込められた圧倒的な意思にうちひしがれました。
宗教、恋愛、心理、階級、犯罪、裁判、家族、金、ここには書ききれないほどのあらゆるテーマを内包しているから、完全な感想を書くにはそれらすべてを踏まえなくてはならないので原稿用紙20枚くらい欲しいところなんですが、
1800年代のロシアでのキリスト教の世界観をベースにしながら、人間模様や争い、医学の未発達による病気や死といった当時のロシアそのものの社会が描かれ、詳細な情景は思い浮かべるのが難しいながらも、時間や距離を越えた世界をありありと感じることができます。
そしてキリスト教的な宗教小説かと思いきや人間の欲情や妬みなどにも発展していき、最終章のあの空間での結末に、人間の心理すべてが描かれていると思いました。
主人公たちだけの心理だけが詳細に描かれているのではなく、登場人物すべての心理が丁寧に描かれ、それが小説ではなく実話ノンフィクションのような世界。
なぜドストエフスキーは人の心をこうも実話のように描けるのか。最後の解説を読むまでノンフィクションとすら思い込んでいました。
でもこの本が素晴らしいのは人間の心理を実話のように描いているからではなく、もっと大きなテーマ、言ってしまえばこの本のすべてが素晴らしいのです。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
ILLUSTRATION 2017 平泉康児
前号の2016で「新人を発掘し始めた」って書いたんですけど、この年は思いっきり新人ばっかりですね。2013年の号は絵画だったり、イラストだったり、チープアートだったり、その界隈で伝説級の人ばかりが載っ …続きを見る
Bonsai 盆栽 新装版 小林國雄
盆栽ってこんなにいっぱい種類があるんですね
片ページに盆栽の写真、もう片ページにその樹木の解説
しかも、ただ種類を紹介するんじゃなくて、松なら松の一級品を、楓なら楓の一級品の盆栽を収めている
…続きを見る
冷酷 座間9人殺害事件 小野一光
ノンフィクションライターによる、大量殺人事件の犯人との面会と裁判ルポ。面会はある日唐突に終わってしまったし、裁判の傍聴は高倍率だったため実際はほとんどできてなかったと著者は書いているが、十分に考えさせ …続きを見る
Distance わたしの#stayhome日記 今日マチ子
コロナ禍になってから、今日マチ子さんがTwitterで発表しつづけてきたイラスト日記を書籍化したもの。
創作は救いだ。誰にも会えずどこにも行けず心が蝕まれていく。創作活動は自分との向き合いだ。自分に …続きを見る
芝生の復讐 リチャード・ブローティガン, 藤本和子
デビュー作『アメリカの鱒釣り』の後に書かれた短編をまとめた作品。
すっごい面白いですねえ。言葉すべてが詩的。
本というものは異世界への小旅行、他人の人生を体験するものであれば最適な作品です。
…続きを見る
Dr.マシリト 最強漫画術 鳥嶋和彦
漫画の書き方を、漫画家目線ではなくて編集者目線から教えてくれる本
漫画家だけでなく、編集者へ向けたアドバイスも収録
マシリトってよくインタビューで「資料室にこもって漫画を読み続けていたら読みや …続きを見る
北のまほろば―街道をゆく〈41〉 司馬遼太郎
1996年に亡くなった司馬の、94年の冬と夏の旅をまとめたもので、最晩年のエッセイになる。街道をゆくはこの後、三浦半島記と絶筆となった濃尾参州記のみで、一連のシリーズの中でもかなりの厚みがあり、それだ …続きを見る
歴史の中で語られてこなかったこと おんな・子供・老人からの「日本史」 網野善彦
歴史学者・網野善彦の晩年の対談集。民俗学者の宮田登との3度にわたる対談を収録している。原著は1998年に出たもので、2012年に新書、2020年に文庫として3度も刊行されているところを見ると、根強い読 …続きを見る