「伝単」というのは、戦時中に敵国の兵士や民間人の戦意を喪失させる目的で、飛行機などから空中散布された宣伝用のチラシ(プロパガンダ・リーフレット)のことです
「米兵はこんな鬼畜なことをする!」とか「日本がアジアの星となる!」みたいなやつですね
敵側が撒く伝単はすぐ廃棄される産物ですし、日本が制作した伝単も戦後すべて廃棄処分されました
だから現在残っているほぼすべての伝単は、とある市井のひとびとがなんとなく残しておいたもの、たまたま残っていたものでしかないわけです
本書は著者が集めに集めた伝単を全ページフルカラーで収録した図録です
こういった伝単のカタログで全ページフルカラーという本はなかなかなくて、
1977年に発売された『秘録・謀略宣伝ビラ―太平洋戦争の“紙の爆弾"』は大半がモノクロページでした
でも、『秘録・謀略宣伝ビラ―太平洋戦争の“紙の爆弾"』が本として劣っているかといえばそんなことはなく、
むしろ『秘録・謀略宣伝ビラ―太平洋戦争の“紙の爆弾"』にしか収録されていない伝単が多数あります
それくらい、歴史に残らない産物なわけです
図録としても素晴らしいですが、
歴史学者という見地から、このビラがどういう背景で作られ、どういう効果があり、どのように兵士たちは受け止めたか、まで踏み込んで書かれています
アメリカの研究者に「このビラ、どのくらい効果あったと思う?」とヒアリングしたり、
アメリカの研究者から「このビラは何が言いたいのかわからない」って返されたことも書かれていたり、
解説があることによって、ビラの寄せ集めではなく、歴史資料としての価値が存分に高められているなあと思いました
本書は2008年刊
一ノ瀬俊也さんもまだ55歳
そろそろ増補版、出しても良い頃合いではないでしょうか!?