/
2022/09/22
カルーセル麻紀の青春時代を描いた「緋の河」の続編となる小説。大胆な虚構を構築したであろう前作と比べると、今作は華々しいデビューを飾ってからのゲイボーイの伝記というか、どうしても実在の人物の行動録みたいになってしまい、小説らしい虚構に欠ける感じもする。物語の舞台が虚構そのもののような芸能界だからかもしれない。冒頭、モロッコでの性転換手術が失敗しかけるあたりも生々しく、読み辛かった。クセのあるマネージャーや東京の芸能界と地方のショーパブ営業がまだ密接だった頃の景気のいい様子、藤圭子のような女性歌手も出てきて面白いが、登場人物たちの行動が説明臭く感じるところもあった。とはいえ、昭和の時代にこのようなマイノリティとしての生き様をメディアを通じて見せつけてきた苦悩や葛藤、そしてそういう環境で闘い、生き続けるしかないという、バイタリティ溢れる主人公の生き様は本当なのだろう。モデルとなった主人公の存命中にこのような小説が生まれてきてよかったと思う。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
すばらしきパーティジョイの世界 坂本犬之介, オフィス新大陸
私、レトロゲームのグッズを買うのが好きで。初代ファミコンのマリオとか、SDガンダムとか。そういった、レトロゲームのグッズをメルカリとかで漁っていると、パーティジョイっていうボードゲームをよく見かけるん …続きを見る
令和元年のテロリズム 磯部涼
「川崎市中1男子生徒殺害事件」をきっかけに川崎の不良や在日といった暗部と、そこから這い上がり連帯する人々を描いた「ルポ川崎」の著者・磯部涼が、登戸の殺傷事件、それに触発された元農林水産省事務次官による …続きを見る
POPEYE 2021年 5月号 [普段使いの東京案内。] POPEYE
これは素晴らしいよ! ポパイの東京特集を読むたびに、数年前に出た「東京に友達が来たら君はどこに連れていくか」という切り口が最高だったな~って思ってたんだけど、今回の切り口もそれに匹敵するくらい素晴らし …続きを見る
岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。 ほぼ日刊イトイ新聞
200ページくらいありますが、2時間くらいでスッと読める、非常に読みやすい本でした。
任天堂の元社長・岩田聡さんの言葉をまとめた本です。
この本は親子の本ですね。遺伝子の本。
山内会長や宮本さん …続きを見る
THE北斎 冨嶽三十六景ARTBOX すみだ北斎美術館(奥田敦子), 葛飾北斎
ゴッホとか西洋画が好きなくせになんでゴッホに影響を受けた北斎や浮世絵をちゃんと見てこなかったんだろうと思って北斎美術館に行きました
で、葛飾北斎による浮世絵は、この有名な富嶽三十六景以外にも諸国 …続きを見る
藤田幸久式モデリングマニュアル―雑多えんたあていめんと。 藤田幸久
先日読んだU井T吾さんのルーツが藤田幸久さんの描かれていた『プラモのモ子ちゃん』にあると知って、藤田幸久さんの本を読んでみました。
『プラモのモ子ちゃん』は版権の関係か書籍化されておらず、藤田幸久さ …続きを見る