鶯谷、渋谷円山町、上野、新橋など山手線の各駅前を「異界」としてとらえ、取材してきた本橋が5番目に選んだ街は、高田馬場だった。所沢で生まれた本橋の父親は、戦後間もない頃に早稲田工業高校を卒業し、西武鉄道で働いていた。いうまでもなく川越や所沢と高田馬場、新宿を結ぶ西武新宿線がある鉄道会社だ。本橋も早稲田大学を卒業し、記者として高田馬場にオフィスを構えて、寝泊りして働いた。つまり、高田馬場に人生のほとんどがあると言っていい。それゆえに他の地域と違い熱量にあふれている。この街は作者が青春を過ごし、働き続けてきた街だ。だからどのエピソードも他人事ではない。学生時代からテレビ局の仕事をし、記者になってからもかぐや姫の大ヒットソング「神田川」にまつわるエピソードを取材した。「神田川」の舞台は高田馬場駅から徒歩10分弱、神田川が明治通りと交差するあたりだ。このすぐそばのビルの一室で本橋は村西とおるが金主となった週刊誌「スクランブル」の若き編集長としてがむしゃらに働いた。本橋に近しい人間も高田馬場の近くにいることが多い。伝説の風俗店、ぼったくりの帝王、ビニ本、エロ本の出版社…。本橋が敬愛している江戸川乱歩が経営していたという下宿も高田馬場にある。早稲田通りと明治通りの交差点に近い。わずか1平方キロの学生街の駅前だが、変遷も激しく、掘り返すと思いがけない事件や著者の思い出が詰まっている。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
アウシュヴィッツ収容所―写真ドキュメント
先日、ゲルハルト・リヒター展に行きまして。そこで『ビルケナウ』って新作が公開されていて。その作品が強制収容所の作品だったのですよ。
隠し撮りみたいな写真で、まさに収監者を殺そうとしてる場面で。
よ …続きを見る
センネン画報 その2 今日マチ子
『センネン画報』大好きです。切なくて詩的で……読む青春です。
『センネン画報 +10 years』が、センネン画報1と2を合体させたものだと思っていたのですが、
『センネン画報 +10 years …続きを見る
Bonsai 盆栽 新装版 小林國雄
盆栽ってこんなにいっぱい種類があるんですね
片ページに盆栽の写真、もう片ページにその樹木の解説
しかも、ただ種類を紹介するんじゃなくて、松なら松の一級品を、楓なら楓の一級品の盆栽を収めている
…続きを見る
ひろなかのなか 弘中綾香プライベートフォトブック 弘中綾香
テレビ朝日の弘中綾香アナウンサーのフォトブックというか写真集です。写真集にインタビューが6ページほどついているので「フォトブック」としたと思うんですけど、世にあるフォトブックのほとんどは駄作というイメ …続きを見る
図書館のプロが教える〈調べるコツ〉: 誰でも使えるレファレンス・サービス事例集 かながわレファレンス探検隊
世に数ある読書術や勉強法の本のいくつかに「調べ物をするときには読みたい資料にたどり着くための力が必要で、この本はその最適解」と書いてあったので読んでみました
読みたい本を探す方法しか載っていない …続きを見る
日本の歴史をよみなおす 網野善彦
日本で差別が生まれたのは何年からなのかとか、昔の日本人はほぼ農民だと思われていたけどそうではなかったとか、女性の地位が低かったのは大正~昭和だけだったとか、日本でお金の流通が始まったのはいつからだとか …続きを見る