氷平線

/
2022/02/04
「ホテルローヤル」で直木賞を受賞した桜木紫乃の、デビューから間もない頃の短編集を集めた1冊。作家が住んでいた北海道の東部、道東を舞台にした作品が多い。もちろん全て舞台は北海道だ。
表題作はオホーツク海に面した小さな港町から飛び出した青年と、港町に残された女の話だ。女は親の都合で祖父の住む、この小さな港に連れてこられたらしい。中学生だというが学校に行っている気配はない。身体を売っているという噂が流れてきた。それから数年後、酒乱の父親と対立した男は、大学受験の直前に女の家に飛び込む。女を抱き、いつかここから連れ出すと誓った。その後、男は東大に合格し、岩見沢の税務署長として10年ぶりに北海道に帰ってくる。そして、再び小さな港に戻り…というあらすじだ。
他にも、牧場の跡取りを産ませるためにフィリピン人妻をあてがわれた男や、牧場に嫁いできて、姑に子作りを監視されている妻の話など、閉塞感のある暮らしと悲しい性愛、たくましい生き様が描かれている。和裁や理容、歯科医など、手に職をもった人たちが多く出るのも特徴だ。本州などと違って移民と少数民族だけで出来上がった大地での生き様だからだろうか。悲しいが、どこか達観しているというか、清々しくもある。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
江口寿史美人画集 彼女 江口寿史
江口寿史さんの彼女展に行きまして。江口寿史ってずーっと絵がうまいなあーすごいなあーと感銘を受けて5万円くらいする複製原画まで買ってしまいました。
江口寿史の絵って5年10年では消費されないところがす …続きを見る
Tokyo graffiti 2024年10月号 Tokyo graffiti
東京でストリートスナップ
素晴らしい
過去20年間、誌面に登場したひとのビフォーアフターだったり、過去の名物記事だったり、過去のアーカイブ名記事全部盛り! な号
すべて許可を取り直して掲載し …続きを見る
ULTRA GRAPHICS 1999-2009 ウルトラジャンプ10周年記念画集 ウルトラジャンプ編集部
ウルトラジャンプの創刊号から十周年までの表紙画やピンナップイラストをまとめた本。
でもけっこう歯抜け。1/3くらいしか載ってない。
でも各作家の画集にすら収録されてない絵があったりとけっこう貴重で …続きを見る
永遠のソール・ライター ソール・ライター財団
ソール・ライターのファンなら間違いない一冊ですし、
ソール・ライターファンでなくてもなにかしらは感じられる写真だと思います
消費されない写真
写真の本質がわかっているひとの写真
点数が …続きを見る
IDOL STYLE 都築響一
東京の部屋の写真を撮り続け、『tokyo style』という伝説の本を産んだ都築響一さんの最新『style』はアイドルの部屋の写真集。
ただ、普通の部屋の写真集の構成にはなっていなくて、右ページにア …続きを見る
夏への扉 ロバート・A・ハインライン, 福島正実
SF不朽の名作
冷凍睡眠とタイムトラベル
1970年代に冷凍睡眠した男が、2000年代に目覚める話
SFって難しすぎるのが、敬遠されがちないちばんの理由だと思うんですね
2020年代に読ん …続きを見る