長年にわたって日本全国の色街を訪ね歩いてきた著者が撮り溜めてきた色街の写真集。説明するまでもなく色街とは男性に性風俗を供給する女性たちがいた、売買春が行われてきた地域だ。戦後、いちおう法律で禁止されるまで地図上で赤い線で囲まれたことから赤線とも呼ばれた。今もなお風俗街であったりラブホテル、連れ込み宿などが残っている地域も多い。著者が撮影したのは90年代から2000年頃までが多く、2014年のこの著書では、すでに現存しないと書かれている建物も多い。目をひくのはおそらく戦前に建てられたであろう、当時モダンであった洋風の建築物や、料亭などの豪勢な和風建築だ。行政当局によってあえて郊外に作られた色街や、市街地が広がり、色街が廃された結果、住宅街に混在している地域もある。独特の街並みだったので、例えば江戸時代に北前船の寄港地として栄えた瀬戸内の島々では、往時の繁栄を偲ぶ名跡として保存されている場合もある。小料理屋、居酒屋などが集まっている地域もあり、まさに盛り場といった風情がある写真が満載だが、やはりそうした場所は西日本や、北前船の寄港地、港町に多いのが見ていてわかる。一攫千金を狙った交易で稼いだ金を、一晩で使い果たした男たちがいたのだろうか。いまやグーグルのストリートビューで日本各地の風景が見られる。著者が歩いた地域をそうしてネットでつい辿って、そして実際に歩いてみたくなる1冊だ。
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