実話誌を中心にノンフィクションの分野で活躍する本橋信宏が、街をテーマに書き上げた連作ルポルタージュの1作目だ。鶯谷というとやはり風俗の街なので、そうした街ができた経緯から、実際に韓デリで働く若い女性、ソープの従業員や取材記者、どころか入り込んでソープ嬢の講習までしていたという伝説の編集者や、性を売る人妻たちの生々しい肉声が綴られている。それだけで終わらず、正岡子規や本橋がこよなく愛する江戸川乱歩、寺山修司などの鶯谷にゆかりのある作家のエピソードが綴られている。街の住人たちの仕草や身なりを観察し、話しかけて声を聞き、名物を味わい、縄文の海進でできた低地の時空を探っていく。人妻たちが明け透けに語る半生は、やはり売春をしているせいもあるのだろうが、性とカネ、欲望が折り重なっていてリアルだ。新左翼の風俗批判や、80年代当時の島田紳助のソープ突撃レポートなど、かつてのエピソードも、第一線の記者として人々の話を聞き込んできた著者にしか書けない。そう考えると、人妻たちの話には更に裏のつながりもあるんじゃないかと思わせられる。実際、東電OLと同僚だったという嬢の話もある。
風俗街に生きる人々の声がきこえてくる一冊だ。最後、韓デリの女性と再会するエピソードの読後感がとてもいい。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
宇宙(ユニヴァース) 北村みなみ作品集 北村みなみ
銀座の蔦谷書店でサイン本が売っていたので購入。
北村みなみさん、Twitterはもちろんフォローしてるけど、自分のなかでめちゃくちゃ特別な作家さん、というわけではありませんでした。
ツイッター …続きを見る
すばらしきパーティジョイの世界 坂本犬之介, オフィス新大陸
私、レトロゲームのグッズを買うのが好きで。初代ファミコンのマリオとか、SDガンダムとか。そういった、レトロゲームのグッズをメルカリとかで漁っていると、パーティジョイっていうボードゲームをよく見かけるん …続きを見る
地球の歩き方 東京 23区 2024~2025 地球の歩き方編集室
地球の歩き方編集部が東京を紹介したらどうなるか
巻頭はめちゃくちゃおもしろかったです
東京で体験できる和傘作りとか浮世絵作りとか、新ビルのテナント一覧とか、知らない情報ばかりで
これが続くな …続きを見る
湯あがりみたいに、ホッとして 塩谷歩波
ちょうどいい
ちょうどいいって僕の中では最大級の褒め言葉なんだけど、受け取る側はそう取ってはくれないよね
人生変わった! とか 感動した! とか、感情の針の振り切ったところに行ってほしいって思って …続きを見る
流転7年うめだまのイギリス・アメリカ自由帳 うめだまりこ
前作は観光客で今作は当事者。
海外に旅行に行った人からは、「海外に差別なんてない」という意見を聞くけど、実際に住んでみるとどんな国にも差別があることを知る。
前作って「イギリスって素敵!」とい …続きを見る
POPEYE 2022年 3月号 [シティボーイの部屋] POPEYE
部屋の本が好きです。
どうせこのあとに出る合本版も買うのに買っちゃう。
今回の部屋特集あまりよくなかったなあ。200平米の部屋ばかり紹介されても「スンッ…」てなる。恵まれすぎている。持つものが …続きを見る