パライゾとはポルトガル語で楽園・天国を意味し、隠れキリシタンが崇めたところだ。幕末から20世紀半ばにかけての土佐の民俗を、宮本常一と思しき学者に人々が話すところから物語がはじまる、7つの短編集で、表題作は、維新後、隠れキリシタンであることを公にしたところ、新政府にとらわれ、土佐に流罪にされて牢屋暮らしをしている男が主人公だ。いつまで経っても棄教しないキリシタンたちに戒律を破らそうと、村の顔役たちは遊女をけしかける。だがその中には武家に生まれながら遊女となった娘もいて、彼女はその身の上からかキリシタンの唱えるオラショ(祈祷)に惹かれていき…というあらすじだ。他にも、南方の海で息子が戦死してしまい、ふいに軍神の母となった女が嵐の翌日、朱色の石が詰まった棺のような漂流物を見つける話や、船乗りたちのむせるような男の臭いに当てられ、つい庭で放尿したところを見られてしまった船宿の女将の話、盲目の男が女2人とまぐわう話…世間や時代に抑圧されながらも明け透けでしぶとくたくましい女たちの性が語られる。切なく、悲しい結末を迎えるものもあるが、そこまでの悲壮感はない。むしろ作者が後書きに記しているように、必死に生きてきた名もなき庶民の声を集めたものだ。ある出来事が語り継がれるうちに誇張されていったり面白おかしくなっていったり、そうした民話のようなものを極めて巧みに創作していて、描かれる時代背景とともに読み応えがあった。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
殺さない彼と死なない彼女 世紀末
もともとはツイッターで話題になった漫画。それを単行本のために全部リライトして、大幅に加筆して『作品』として形にしたのがこの本です。
ツイッターで流れてくるマンガの一部や、この本のタイトルや表紙の雰囲 …続きを見る
ILLUSTRATION 2013
Twitterでフォローしている絵師さんが「illustrationに掲載されました!」って呟いてて、こんな本あるんだと思って購入。2013年から毎年出てるみたいですね。
これはイラストレーターのカ …続きを見る
独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法 読書猿
分厚い! 重い!
800ページ!
総重量、2キロくらいあると思います
この圧力、いまいちばん書店で目を惹く本でしょう
書名の通り、独学のやりかたをまとめた本です
やる気の出し方、学び …続きを見る
星を継ぐもの ジェイムズ・P・ホーガン, 池央耿
面白い本はネタバレを極力せずに感想を書きたい
2週間くらいかけてゆっくりと読みました。
ちょうど読み進めているときに、この「『星を継ぐもの』シリーズ未翻訳の作品の発売が決定!」というニュー …続きを見る
秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本 J・ウォーリー・ヒギンズ
この間投稿した『GHQカメラマン~』をAmazonで検索したら、この本がおすすめ欄に表示されて、面白そうだなーと思って購入。いやもう最高です。
アメリカ出身のヒギンズさんが軍属として来日して、休暇に …続きを見る
美術手帖 2012年1月号 No.962 <特集 : 世界のアートマーケット> 美術手帖
アートはどうやって価値が上がり、どうやって値段が付けられ、ギャラリーはどういう仕事をして市場を作っていくのか
日本のアートマーケットは小さい
絵を買うことも一般的ではないし、ギャラリーに行くと …続きを見る
川瀬巴水作品集 増補改訂版 川瀬巴水, 清水久男
川瀬巴水という版画家をみなさんご存知ですか? 僕はつい最近まで知りませんでした
ジョブズの本だかAppleの歴史だかを読んで、ジョブズが川瀬巴水というを愛していたこと、来日してはそのたびに川瀬巴水 …続きを見る
生きるよすがとしての神話 ジョーゼフ・キャンベル, 飛田茂雄, 古川奈々子, 武舎るみ
村上春樹のオススメ本シリーズ
どうして宗教は生まれたのか、どうして人間は発展してきたのか、どうして人間は猿のような本能的な暮らしをせずに文化的な暮らしを送るようになったのか、ということが書かれて …続きを見る
フレームアームズ・ガール デザイナーズノート 島田フミカネ
プラモ屋に行くと置いてある、かわいい装甲女の子がパッケージに描いてあるプラモデル、ありますよね
フレームアームズ・ガールというシリーズもので、そのパッケージ画像と、開発者インタビューをまとめた本です …続きを見る
ILLUSTRATION 2017 平泉康児
前号の2016で「新人を発掘し始めた」って書いたんですけど、この年は思いっきり新人ばっかりですね。2013年の号は絵画だったり、イラストだったり、チープアートだったり、その界隈で伝説級の人ばかりが載っ …続きを見る