著者は現在、武蔵野の国立ハンセン病資料館で学芸員をしている木村哲也。彼が全国を旅した民俗学者・宮本常一の足跡を追っていった記録だ。訪れた時期は木村が学生だった90年代が多いが、それから改めて取材している地域もある。訪れた場所は、米の穫れない山間の村や離島が多い。
例をあげると、岐阜県石徹白、高知県四万十川、月灘、沖の島、瀬戸内の二神島、佐合島、北海道利尻島、福島県大内、三重県志摩などだ。いずれの地域も過疎化が進んでいる。だが宮本が訪れた戦前戦後は、明治後の人口増加のせいもあるだろうが、そうした地域に実に多くの人たちが暮らしていたことがわかる。そしてそれらの地域は、例えば白山信仰の参詣客で賑わっていたり、北前舟の寄港地として栄えていたり、豊かで、全国の様々な地域と交流が盛んだったことがわかる。
著者は数十年前に宮本が取材したことやしなかったことを改めて整理して、現在の各地域の様子や、これからについて調べていく。そして、後書きにも書いてあるように、我々がなんとなく抱いている常識や先入観を覆していく。さらに、過疎に直面している旅した地域を、宮本のように繋げあい、活性化させていこうとしている。
どの地域も訪れるのは容易ではないが、一度は訪れたくなる。そんな本だ。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
万延元年のフットボール 大江健三郎
大江健三郎をはじめて読みました
大江健三郎って、初期はいわゆる大衆的なものを書いていて、後期は人間の深淵を覗き込むような作風に変化していったらしい
で、この本は後期に至る転換点らしい
土着信 …続きを見る
銃・病原菌・鉄 ジャレド・ダイアモンド, 倉骨彰
なぜヨーロッパ人が世界中の地域を支配できて、アジア諸国やアメリカの原住民がヨーロッパを支配するようなことは起きなかったのか、という人類史の疑問を紐解いていく本です。人類学だけでなく、社会学、地形学、言 …続きを見る
アルジャーノンに花束を ダニエル・キイス, 小尾芙佐
日本でも大ヒットして、ドラマ化もされましたね
とにかく泣けるって情報だけ知ってて、アルジャーノンって女の子が死ぬ話なのかなって思ってました
めちゃくちゃおもしろかったです
面白かった本に …続きを見る
パルプ・ノンフィクション: 出版社つぶれるかもしれない日記 三島邦弘
益田ミリさんとかアジカンのゴッチとかいい人のいい本をいっぱい出しているミシマ社の社長のミシマさんが出版業界に対する危機感や自社の火の車っぷりを書いた本
なにかに連載されたものではなく、ほぼ書き下 …続きを見る
ILLUSTRATION 2018 平泉康児
もう完全に新人さんオンリーの本になりましたね。
その方が健全だし、日本のイラストレーターの未来といいう意味においても重要ですよね。
ただ、新人を発掘する能力がこのころは身についていなかったのか、掲 …続きを見る
週刊少年ジャンプ秘録!! ファミコン神拳!!! 「ファミコン神拳」伝承委員会
ジャンプに大昔に掲載されていた「ファミコン神拳」コーナーのまとめ本。ときわ荘にしろ、天才が同じ場所に多数現れる現象はなんなんでしょうね。堀井雄二、マシリト、えのん、どいんとスーパープレイヤーばかり。彼 …続きを見る
謝るなら、いつでもおいで: 佐世保小六女児同級生殺害事件 川名壮志
発生当時、ネットでは犯人の写真から「NEVADAたん」と呼ばれていた事件を追った本
この事件の被害者の女生徒は毎日新聞の地方局局長の娘さんで、彼の部下で日々新聞を作っていた記者が記録した激動の日々
…続きを見る