/
2021/02/25
北海道を舞台にした産業の盛衰、人々の来歴を描いた連作短編。淡々とした筆致だが、作者が実によく北海道の産業を調べていることがわかる。北海道の大きな産業といえば炭鉱や漁業、農業などだが、作者がテーマとしたものは、表題作のレンガ作りや養蚕業、毛皮のためのミンク繁殖業、馬蹄の装鉄屋など、かつてわずかに興り、今はほとんど残っていない産業ばかりだ。
表題の「贖(あがな)う」とは、買い求めるといった意味ではなく、罪のつぐないを意味している。札幌は道庁舎やホテル、ショッピングモールなどにも赤レンガがふんだんに使われているが、それらを最初に作り始めた移民は、どんな生き方をしてきたのだろうか。機械化される前の開拓農家や、動物の毛皮販売を生業としている人たち、その子孫たちは今どこで、何をして暮らしているのだろうか。産業と、それに携わった人たちの生き死にを感じさせる作品だった。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
POPEYE 2024年 1月号 [ガールフレンド。] POPEYE
ガールフレンド特集史上最高傑作ではないでしょうか!
東京で暮らすカップルの東京デート案内
街ごとにデートコースが提示されていて、過去のデートスポットぶつ切り形式より遥かに実用的です
これこれ …続きを見る
電撃PlayStation 2020年5月号 Vol.686 電撃PlayStation
電撃PlayStationの定期刊行最終号です。だけど特別なことはとくになし。淡々と最新のゲーム情報を載せているいつも通りの電撃PlayStation。
最終号って、やっぱり特別なものだと思うんです …続きを見る
グランドゼロ [GOD‐GUN世郎<グランドギア>]改題 HIROSUKE KIZAKI MEMORIAL EDITION 木崎ひろすけ
木崎ひろすけ作品をすべて読みきってしまいました。もうこの世に氏の作品はなく、新たに産み出されることもありません。悲しい。
木崎ひろすけ氏のデビュー作です。雑誌の廃刊に伴う連載終了のため、風呂敷を …続きを見る
ストーナー ジョン・ウィリアムズ, 東江一紀
たいていのひとは夢に満ち溢れた青年時代を送り、年をとるにつれて何者にもなれない自分を自覚し、何者にもなれないまま死んでいく
だが、この世界は無数の名もなき一般人で成り立っている
人生はつらく厳 …続きを見る
anna magazine vol.10 anna magazine
増税前にAmazonに在庫があるだけのアンナマガジンを購入しました。自分以外にこの雑誌を知っている人に出会ったことすらない。だからめちゃめちゃ応援してます。
やっぱいいですね。何も紹介する気がない作 …続きを見る
生きるよすがとしての神話 ジョーゼフ・キャンベル, 飛田茂雄, 古川奈々子, 武舎るみ
村上春樹のオススメ本シリーズ
どうして宗教は生まれたのか、どうして人間は発展してきたのか、どうして人間は猿のような本能的な暮らしをせずに文化的な暮らしを送るようになったのか、ということが書かれて …続きを見る