直木賞受賞作ということで読んでみたが、全体的に読みづらい文章だった。ところどころで偏見や差別、時代の荒波といった逆境を乗り越えようとする登場人物の熱のこもった描写も出てくるのだが、文献史料を丹念に調べて描いたんだろうなと、透けて見えてくるような感じだった。
樺太や極東ロシアを舞台に、文明とは、祖国、領土、民族、言語とは何かといった、19世紀から20世紀に勃興した帝国主義に翻弄される人々を描いているが、登場人物よりも著者そのものの奮闘ぶりが目についてしまう。終盤を読み進めている頃に文藝春秋の特設サイトをみたら、紙の登場人物紹介には載っていない大隈重信やレーニンについての記述があった。終盤までがネタバレしているのは興ざめする。無理やり直木賞に仕立て上げた印象が残る。
コレラや天然痘、結核などで次々と登場人物が亡くなっていく陰鬱な描写が出てくるが、史実に基づいている以上、実際に北海道などで明治時代に起こったことなのだろう。新型コロナウイルスに襲われた2020年を先取りしているような感じがあった。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
東と西の語る日本の歴史 網野善彦
日本中世史を専攻している歴史学者、網野善彦が1982年と、比較的初期に著した日本の通史。といっても、弥生時代から始まり、著者の専攻分野だった応仁の乱、戦国時代や北条早雲の活躍した時代で著述は終わる。タ …続きを見る
ILLUSTRATION 2016 SE編集部
2015年版がなぜか発売されていなくて2016年に飛びます。(合ってますよね?)
いままでは「どこかで絶対目にしたことのあるイラスト」が載っているような、大物中心の本だったんですが、この年から新人発 …続きを見る
すばらしきパーティジョイの世界 坂本犬之介, オフィス新大陸
私、レトロゲームのグッズを買うのが好きで。初代ファミコンのマリオとか、SDガンダムとか。そういった、レトロゲームのグッズをメルカリとかで漁っていると、パーティジョイっていうボードゲームをよく見かけるん …続きを見る
窓ぎわのトットちゃん 黒柳徹子
日本で一番売れた本ですね。(800万部。ノルウェイの森は日本で250万部、世界で1200万部です)
どんな内容かまったく知らなくて、「黒柳徹子さんの幼少期のことが書かれているんだろうなー」くらいで読 …続きを見る