/
2021/02/12
カルトという言葉は一度も出てこないが、カルト宗教にはまってしまった家族を題材としている。なぜ出てこないかというと、中学生に成長していく主人公・ちひろがそう認識していないからだ。
叔父がちひろの両親を説得しようと試みたり、姉が家出をしてしまっても、あくまでも筆致はそれらをぼんやりと受け止めるちひろの視点から描かれており、ほのぼのとすらしている。が、物語が始まってすぐに両親が宗教にはまってしまい、ちひろが学校でいじめられたり、引越しをする度に家が小さく、親の服装が貧相になっていく様を読み進めるうちに、読者は言い知れぬ不安を覚えてしまうに違いない。
そしてカルト宗教の2世は、組織に逆らったり入信を拒否したらどうなってしまうのか…明らかにされていないが、ちひろの目から見ても何かあまり良くないことが起きそうなのはうかがい知れる。
今村夏子は、主人公の狭い視野から世界を見ていく描写が抜群にうまい。物語はちひろが高校受験をする前の、宗教施設での宿泊行事で終わる。高校に進学し、世界が広がっていくであろうちひろの未来が良いものであるようつい祈ってしまう、そんな読後感の残る小説だった。芦田愛菜主演で映画化もされている。監督も大森立嗣なので期待できそうだ。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
増補 日本古代文学入門 三浦佑之
日本書紀や古事記、万葉集はどんな物語か、というのをわかりやすく解説してくれる本
書いたのは、三浦しをんのお父様
古事記ってこんなに面白いお話だったんですね~~~
旧約聖書の日本版
イザナキ …続きを見る
世界のシティ・ガイド CITIX60シリーズ アムステルダム 和田侑子
アムステルダムに住むクリエイターやアーティストたちが、アムステルダムの観光名所やレストラン、お店、ナイトスポットなどを現地に住む人ならではの視点で教えてくれる観光ガイド本。
POPEYEの街ガイドの …続きを見る
キュロテ・ドゥ 世界を変えた15人のスゴい女たち ペネロープ・バジュー, 関澄かおる
世界を変えたすごい女15の第2段。こういうものってどうしても第一段の漏れ分になってしまう。
知る人ぞ知るすごい人! でもいいんだけど、なにも成し遂げてない人を載せるのはオバマにノーベル平和賞をあげる …続きを見る
銃・病原菌・鉄 ジャレド・ダイアモンド, 倉骨彰
なぜヨーロッパ人が世界中の地域を支配できて、アジア諸国やアメリカの原住民がヨーロッパを支配するようなことは起きなかったのか、という人類史の疑問を紐解いていく本です。人類学だけでなく、社会学、地形学、言 …続きを見る
わたしが知らないスゴ本は、 きっとあなたが読んでいる Dain
読書好きなら一度は読んだことがあるブログ、『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』の管理人Dainさんによる本!
めちゃくちゃ楽しみにしてました
ブログがあんだけ面白いんだから本にな …続きを見る
すべてがFになる THE PERFECT INSIDER S&Mシリーズ 森博嗣
多くの人が「面白かった小説」として挙げる『すべてがFになる』を読みました。すごい面白いんだけど、西尾維新のほうが面白いなあーと思ってしまった。
これは、森さんが理系の人だからだと思う。
すごく面白 …続きを見る
タミヤ公式 ミニ四駆 パッケージアートコレクション 上 タミヤ
こんなおっさんホイホイな画集が出るなんて……
amazonレビューが変に低いのは、上下分冊商法だからでしょうか
たしかに一冊にまとめられるし、製本が危うくてページが取れるんじゃないかと心配になる
…続きを見る
20世紀エディトリアル・オデッセイ: 時代を創った雑誌たち 赤田祐一, ばるぼら
時代を作った雑誌たち、ということでホール・アース・カタログからはじまり、それが日本に来ていろんな雑誌に影響を与え、宝島やポパイ、アンアンなどがはじまり……という、日本における雑誌のはじまりの歴史
…続きを見る