/
2021/02/12
カルトという言葉は一度も出てこないが、カルト宗教にはまってしまった家族を題材としている。なぜ出てこないかというと、中学生に成長していく主人公・ちひろがそう認識していないからだ。
叔父がちひろの両親を説得しようと試みたり、姉が家出をしてしまっても、あくまでも筆致はそれらをぼんやりと受け止めるちひろの視点から描かれており、ほのぼのとすらしている。が、物語が始まってすぐに両親が宗教にはまってしまい、ちひろが学校でいじめられたり、引越しをする度に家が小さく、親の服装が貧相になっていく様を読み進めるうちに、読者は言い知れぬ不安を覚えてしまうに違いない。
そしてカルト宗教の2世は、組織に逆らったり入信を拒否したらどうなってしまうのか…明らかにされていないが、ちひろの目から見ても何かあまり良くないことが起きそうなのはうかがい知れる。
今村夏子は、主人公の狭い視野から世界を見ていく描写が抜群にうまい。物語はちひろが高校受験をする前の、宗教施設での宿泊行事で終わる。高校に進学し、世界が広がっていくであろうちひろの未来が良いものであるようつい祈ってしまう、そんな読後感の残る小説だった。芦田愛菜主演で映画化もされている。監督も大森立嗣なので期待できそうだ。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
映像研には手を出すな! 大童澄瞳
既刊5刊 連載中 (2020年5月2日時点)
このサイトでは「作品は最終回を見てこそ評価が決まる」という想いから、完結した作品のみをレビューしてきました。
ですがそれだと連載中の作品を応援でき …続きを見る
POPEYE 2022年 3月号 [シティボーイの部屋] POPEYE
部屋の本が好きです。
どうせこのあとに出る合本版も買うのに買っちゃう。
今回の部屋特集あまりよくなかったなあ。200平米の部屋ばかり紹介されても「スンッ…」てなる。恵まれすぎている。持つものが …続きを見る
アンドロイドは電気羊の夢を見るか? フィリップ・K・ディック, 浅倉久志
『ブレードランナー』の映画を先に見ていて、しかも見たのが2010年とかだったので
「古い映画だなあ」としか思わなかったんだけど、本を読み返したら「映画もちゃんと見返さないとなあ」という気分になった
…続きを見る
古文書返却の旅――戦後史学史の一齣 網野善彦
著者は日本中世史の学者・網野善彦。といっても、日本史学の本流である政治史ではなく、中世から近世にかけての漁民や流通に従事した名もなき人々や、寺社の清掃や牛馬を扱う人々などを研究していた、言ってみれば異 …続きを見る
Casa BRUTUS特別編集 音のいい部屋 Casa BRUTUS
音のいい部屋、というタイトルですが、
有名人がレコードプレーヤーを置いている部屋の写真集といったほうが近いです
とにかく音に拘りまくったオーディオルームの写真集というわけでもなく、リビングにぽ …続きを見る
FF DOT. -The Pixel Art of FINAL FANTASY- スクウェア・エニックス
ドット絵が好きです。
この本はゲーム『ファイナルファンタジー』シリーズののドット絵をまとめた本。スーファミ後期の芸術的なドット絵もいいけど、ファミコン初期のチープなドット絵も好き。
キャラクターだ …続きを見る
新版 近藤聡乃エッセイ集 不思議というには地味な話 近藤聡乃
近藤聡乃さんが2011年から2012年にブログに書いていた文章を書籍化したもの。もちろん書籍化される前提で書かれたものではなく、ファンに対しての近況報告だったり、近藤聡乃さん個人の備忘録に近い。
だ …続きを見る
30th Anniversary ドラゴンボール超史集 ―SUPER HISTORY BOOK― 鳥山明
「完全資料集」「大全集」とは名ばかりのスカスカ資料集が多いなか、この本は完璧。全部詰まってる。マンガ、アニメ、グッズ、ゲーム、全部詰まってる。ファンクラブ会報限定のマンガとかも載ってる。全280ページ …続きを見る
忍びの者 その正体 忍者の民俗を追って 筒井功
民俗学を研究している著者が、古文書などによって忍者の有様について考察している。4つのケースを元に忍者について考察しているが、その実態は戦国武者、支配層によって金銭で雇われた集団で、偵察や橋の寸断などを …続きを見る