パライゾとはポルトガル語で楽園・天国を意味し、隠れキリシタンが崇めたところだ。幕末から20世紀半ばにかけての土佐の民俗を、宮本常一と思しき学者に人々が話すところから物語がはじまる、7つの短編集で、表題作は、維新後、隠れキリシタンであることを公にしたところ、新政府にとらわれ、土佐に流罪にされて牢屋暮らしをしている男が主人公だ。いつまで経っても棄教しないキリシタンたちに戒律を破らそうと、村の顔役たちは遊女をけしかける。だがその中には武家に生まれながら遊女となった娘もいて、彼女はその身の上からかキリシタンの唱えるオラショ(祈祷)に惹かれていき…というあらすじだ。他にも、南方の海で息子が戦死してしまい、ふいに軍神の母となった女が嵐の翌日、朱色の石が詰まった棺のような漂流物を見つける話や、船乗りたちのむせるような男の臭いに当てられ、つい庭で放尿したところを見られてしまった船宿の女将の話、盲目の男が女2人とまぐわう話…世間や時代に抑圧されながらも明け透けでしぶとくたくましい女たちの性が語られる。切なく、悲しい結末を迎えるものもあるが、そこまでの悲壮感はない。むしろ作者が後書きに記しているように、必死に生きてきた名もなき庶民の声を集めたものだ。ある出来事が語り継がれるうちに誇張されていったり面白おかしくなっていったり、そうした民話のようなものを極めて巧みに創作していて、描かれる時代背景とともに読み応えがあった。
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