釧路出身のエンターテイナー、カルーセル麻紀の若い頃を描いた青春小説だ。新聞の夕刊に連載されていた時から話題になっていた。物語は戦後間もない頃、漁業や炭鉱で賑わっていた道東の港町・釧路から始まる。のちにカーニバル真子としてテレビの世界に羽ばたく秀男は、幼少期から、化粧をして、女として生きていきたいという秘めた気持ちがあった。そうした英男のことを、親に忠実な兄と比較し許さない父親と、何かと心配してくれる母と姉。
英男は小学生ながらにして港の男たちに好かれ、男たちを虜にしていく。最初に好きになったのは両親を失くし、かまぼこ工場の親方に拾われて小学生の時から働いている同級生。父親が日本人ではないというが、同級生たちから「(女の)なりかけ」、「ばけもの」と呼ばれていじめられている英男をかばってくれる唯一の親友だった。血筋のせいか体格も良く、いじめられている英男をいつもかばってくれるが、彼も小学校の卒業と同時にいなくなってしまう。体格がいいのを巡業中の親方に見込まれ、東京で力士になるというのだ。失恋し、男でも女でもなく、何者でもない自分になりたくて、そしてそういう自分を守りたくて、きれいな嘘を覚えていく英男。見た目は女たちに負けない自信があった。中学では放送部に入り、運動部の男子たちを手玉にとって居場所を見つけていく。文化祭で白雪姫の役をやり、女として、きれいな人として生きる決意を固めていく。ゲイバーやシスターボーイなどの存在も知り、夜の街にも立ち、ついに高校1年生の秋、釧路から出ていく。そしてすすきののゲイバーで働き、道内を転々として大阪にたどり着き…といったあらすじはあるのだが、それはさておき、一貫しているのは美しくなりたい、美しくなって誰からも愛されたいという揺るぎない秘めた思いを抱え、決断し、行動していく一人の若者の姿と、それを暖かく受け入れる姉と母という家族の物語だ。この小説はカルーセル麻紀という今もなお実在の人物がいるからこそ、大胆で、過剰なまでに美しい空想で描かれている。本当のカルーセル麻紀の半生は、彼女の自伝を読んでいないのでわからないが、この小説は最後は、美しい、桜木紫乃らしい感動的な家族の描き方で終わっている。題名となった緋の河の由来や、大阪で相棒となる動物などの伏線もうまく張られている。長いが最後まで是非読んでほしい。
今やアニメーション映画監督として有名な今敏さんが1995年に描いたマンガの復刻完全版です。1995年に描かれたといっても世の人の99.9%は読んだことがないと思うのでネタバレに配慮してストーリーについ …続きを見る
村田蓮爾2冊目の画集『futurhythm』の新装丁版。
読みながら、GANTZスーツって村田蓮爾さんの影響受けてるんじゃないかなあと思いました。
めちゃめちゃ分厚くていい紙を使っていて、それ …続きを見る
さけハラスさんの商業初画集。日本の観光名所に行って、その風景と、オリジナルの少女のイラストを合体させる、っていう感じの画集です。
で、絵だけでストーリーを想起させる説得力があるのに、今回の画集に書き …続きを見る
本を読まなくちゃいけないんだけど、小説とかはキツイ。そんなときはデータ集を読むに限る。SDガンダムのカードダスのストーリーと、カードの線画を集めた本です。ギッチギチに情報が詰まっててボリューミー。
…続きを見る
一年の延期を経てようやく発売されました、窪ノ内英策さんの絵の仕事集です。画集みたいなサイズですけど、中身は雑誌『イラストノート』での窪ノ内英策特集をベースにボリュームアップしたものです。
「鉛筆の下 …続きを見る