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2022/09/22
歴史小説の名手が描く、港町を舞台にした人情もの。主人公は戦国武将や歴史人物ではなく、宿屋で働く娘だ。口減らしで奉公に連れてこられた。場所は備中笠岡。かつては賑わっていたが、河川の土砂が堆積し、大型の船が泊まりにくくなってからは往時の賑わいはない。幕末、時代が混迷していく中、主人公の志鶴は口減らしで売られてきた悲しみを乗り越え、懸命に働いている。港町の登場人物も魅力的だ。女郎屋から身請けされ、宿屋を持ち切り盛りしている美人女将、その女将に想いを寄せる町の親分、石工や船乗りたち。長岡藩士・河井継之助や京から落ち延びてくる長州藩士などもやってきて、次々に事件が起き、鮮やかに、時に悲しい結末をもって一編が終わる。激動する時代のうねりが小さな港町に生きる庶民にも押し寄せてくるが、それらを乗り越え、ひたむきに笠岡で働く主人公に魅了されてしまう。
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