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2025/01/17
アウシュビッツに送られた精神科医が、アウシュビッツという場での人々がどういうふうに精神に異常をきたし、どのような過酷な目に遭い、どのように生き延びてきたかを綴った本
アウシュビッツからの生還者の本はたぶんいっぱいあるんでしょう
著者は精神科医という立場から、囚人と看守のパワーバランスを見抜き、いかにラクなポジションにつき、いかに看守の罰を受けないところにいき生き延びてきたかを描いています
例えば集団で移動するとき、一番うしろにいるとドイツ人からムチを振るわれる
だから先頭の、囚人のリーダーの近くにポジションを取る
看守のご機嫌取りを怠らなければ理不尽な暴力から逃れる可能性が1%でも上がる
理不尽な暴力は身体に傷を作り、粗悪な環境で傷口が悪化すればそこから簡単に死に至る
そうして強制収容所内を生き延びていき、収容所内の医師の地位を得る
だからこそ多くの同胞の死を看取り、多くの理不尽な犠牲を見てきた
アウシュビッツは常に生と死が紙一重で、
別の道を選んでいればガス室送りになっていたり、
タイミングがずれていれば銃撃の餌食に遭っていたり、
このひとが生還したことやアウシュビッツの状態を後世に伝えられていることは奇跡なんじゃないかと思ったり
そんな奇跡を読むことは後世の使命じゃないかと思ったり
アウシュビッツには生還者の数だけ物語がある
ひとつでも多くの証言を聞くことが、我々にできる唯一のことではないだろうか
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