1840年、幕末までもう少しという時代、気仙沼で船乗りになった男は、荒天による漂流の末、南洋の離島に命からがらたどり着いた。島は江戸時代初期、小笠原諸島という名前がついた日本の領土ではあったが、無人島で、いつからか外国人が定住し、たまに寄港する船との取引で暮らしを立てていた。外国人たちは無人島をボニン・アイランドと呼んでいたのだった。漂流した船乗りたちはみな故郷に帰りたがり、必死で船を修復しようとするが、男は一人だけ、欧米系の白人たちや、その男たちに雇われて南洋の女たちと交わるうちに、故郷を偲びつつも、とある出来事がきっかけでついに島に定住することになる。そして現代、ふと祖父の持ち物だった木製の民芸品をフリーマーケットで見つけ、自らのルーツを探し始める男がいた。寡黙な祖父は八丈島出身だと聞いていたが、実は小笠原諸島に住んでいたのではないかと。男は勤め先を急に辞め、小笠原行きの船に乗り込む。そしてそこで知らさせる、アメリカ占領下の小笠原諸島の歴史。もう一人、突然、チェロが弾けなくなってしまった少年がいる。少年は島の人々、自然と交感していくうちに心を回復していく。フリーカメラマンをしているという少年の父親でも最後、伏線を回収しており、大自然の孤島の、厳しくも温かい人の営みが感じられてよかった。
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