江戸時代末期、高知県の山間部の農村を舞台に、狗神憑きとみられる集団ヒステリーが起きた。踊り狂うのは、いずれも貧しい小作人ばかり。その狂乱の推移が村の娘みつと庄屋の老旦那、そして派遣された武士たちの目線で描かれるミステリー、ホラーといった小説だ。狂乱の原因とされたのは狗神憑きだったと言われるが、憑かれた者たちは途中から狸が憑いていると言い出したり、結局のところはなんだったのか最後までわからない。だが江戸幕府が200年以上続いたにも関わらず、農村の人々が貧しいまま、土地に縛り付けられていたことが事件の一因になっていたのではないかと、国学者平田篤胤を慕う下級武士を通じて作者は語っている。というのも、信じられないようなこの事件は、実際に土佐の山中で起きており、それが複数の史料に書かれていると作者ははじめに書いており、その事件がなぜ起きたのか、作家ならではの想像力、飛躍力をもって当時の事件を再構築しているのだ。農民の貧しい暮らしぶりや、決まった時刻に毎日集団で狂い出す様などが写実的で、庄屋や下級武士たちの苦悩も今とそんなに変わらない。小作人たちが餓死するほどの飢饉が、米がほとんど穫れない山中の村にまで及んでおり、その劣悪な暮らしから逃れようとしたり、一揆を起こしたり、果ては尊皇攘夷思想が階級を問わず広がっていく様子が描かれる。狗神憑きや村八分、俗信や噂に満ちた山村でありながら、明治維新後、土佐出身の自由民権運動理論家・植木枝盛は同じ土地を「自由は土佐の山間より出づ」と讃えた。そうした時代の転換期に起きた、「ええじゃないか」の乱舞にも通じるような事件を描写した小説だ。
利根川は言うまでもなく関東一円、神奈川県以外の関東中から水をあつめ、太平洋に流れる流域面積日本一の河川だ。その利根川について書かれた本だ。内容は大きく分けて2つに分かれる。江戸時代の東遷事業と、近代の …続きを見る
今やアニメーション映画監督として有名な今敏さんが1995年に描いたマンガの復刻完全版です。1995年に描かれたといっても世の人の99.9%は読んだことがないと思うのでネタバレに配慮してストーリーについ …続きを見る
村田蓮爾2冊目の画集『futurhythm』の新装丁版。
読みながら、GANTZスーツって村田蓮爾さんの影響受けてるんじゃないかなあと思いました。
めちゃめちゃ分厚くていい紙を使っていて、それ …続きを見る
村田蓮爾さんの初の画集です。漫画もすこしだけ載っていて、そこからは寺田克也さんや大友克洋さんのDNAも感じます。
1997年に発売された画集なのに古さを感じさせない世界観は、時代を反映したものではな …続きを見る
SDガンダムのラフの線画がいっぱい載ってる本です。
SDガンダム外伝って、全部横井画伯のイラストだと思ってたんですけど、そうじゃなかったということを今知りました。そういった、新しい発見があって楽しい …続きを見る
東映不朽の名作あの「仁義なき戦い」のファンブック。当然、仁義シリーズが好きな人に向けた内容ですが、杉作J太郎、植地毅、吉田豪といったライター陣の熱量がハンパないので、単純にサブカル本としても十分に楽し …続きを見る