/
2021/03/23
タイトルはのこりび、と読む。白昼堂々、議員会館から盗み出されたヤミ献金一億円。盗んだ犯人は、かつて名を馳せた伝説の元ヤクザだった。犯人を今は議員会館の老守衛となった元マル暴刑事が追う。そして議員やヤミ金の送り主の不動産王とつるんだ元ヤクザも加わり…という、王道の冒険小説。
バブル時代に、決定的に変わってしまったヤクザのあり方。昔気質の任侠道が、カネだけが全てになってしまったという物語の背景が一貫していて、そして常に冒険、つまり主人公たちの行動で物語が進み続ける。
なぜ北に向かって犯人は進んだのかというところも最後に明かされるが、主人公の行動のように常に一本の筋が入っていた。「最果ての街」同様に丹念に現地取材をしたのだろうなという、ややくどい情景描写もあったが、図らずも東日本大震災で大きな被害を受ける前の東北各地が描かれており、作者が震災前にこうして東北各地を取材していたのは、何か縁があったのかもしれない。
東映ヤクザ映画をそのまま文章化したような作品なので好き嫌いが分かれるかもしれないが、やはり義理人情というものは、多くの日本人の琴線に触れるところもあるのではないか。文庫の解説文で分かったが、明らかに作者はそれを意識している。というよりも、そこに向けてこの作品を捧げたと言っていいかもしれない。西村健の小説はどれも読後感がいい。エンターテインメントの王道だ。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
ILLUSTRATION 2017 平泉康児
前号の2016で「新人を発掘し始めた」って書いたんですけど、この年は思いっきり新人ばっかりですね。2013年の号は絵画だったり、イラストだったり、チープアートだったり、その界隈で伝説級の人ばかりが載っ …続きを見る
関心領域 マーティン・エイミス, 北田絵里子
同名の映画を観て、気になって読んてみました
映画とぜんぜん違いました
映画は、強制収容所の近くに住む軍人一家が強制収容所から聞こえる悲鳴や銃声にまったく関心を寄せない異常さを描いた作品だと思う …続きを見る
パルプ・ノンフィクション: 出版社つぶれるかもしれない日記 三島邦弘
益田ミリさんとかアジカンのゴッチとかいい人のいい本をいっぱい出しているミシマ社の社長のミシマさんが出版業界に対する危機感や自社の火の車っぷりを書いた本
なにかに連載されたものではなく、ほぼ書き下 …続きを見る
HERE ヒア リチャード・マグワイア
『バーナード嬢曰く。』という読書マンガがありまして。作者がSF読みだからSFの本ばかり紹介されるんですけど、このリチャード・マグワイアの『HERE』は絵本みたいで読みやすい、とのことだったので挑戦して …続きを見る
2009-2019“ハマ・オカモト”とはなんだったのか? ハマ・オカモト
ベースマガジンに掲載されたインタビューを中心に、ハマ・オカモト個人を紐解いていく本です。
当時のインタビューの再録あり、ハマ・オカモトのベースコレクションといった企画もあり、2020年時点での振り返 …続きを見る
198Xのファミコン狂騒曲 塩崎剛三
先日読んだ田原さんのファミ通本はどうしようもない本だったけど、ファミ通初代編集長の東府屋ファミ坊さんの書くファミコン本は意義があるよ!
僕は浜村通信以降のファミ通しか読んでいなくて、『おとなのし …続きを見る
Like a balance life 村田蓮爾
村田蓮爾さんの初の画集です。漫画もすこしだけ載っていて、そこからは寺田克也さんや大友克洋さんのDNAも感じます。
1997年に発売された画集なのに古さを感じさせない世界観は、時代を反映したものではな …続きを見る