/
2021/02/25
北海道を舞台にした産業の盛衰、人々の来歴を描いた連作短編。淡々とした筆致だが、作者が実によく北海道の産業を調べていることがわかる。北海道の大きな産業といえば炭鉱や漁業、農業などだが、作者がテーマとしたものは、表題作のレンガ作りや養蚕業、毛皮のためのミンク繁殖業、馬蹄の装鉄屋など、かつてわずかに興り、今はほとんど残っていない産業ばかりだ。
表題の「贖(あがな)う」とは、買い求めるといった意味ではなく、罪のつぐないを意味している。札幌は道庁舎やホテル、ショッピングモールなどにも赤レンガがふんだんに使われているが、それらを最初に作り始めた移民は、どんな生き方をしてきたのだろうか。機械化される前の開拓農家や、動物の毛皮販売を生業としている人たち、その子孫たちは今どこで、何をして暮らしているのだろうか。産業と、それに携わった人たちの生き死にを感じさせる作品だった。
アドセンス336×280レクタングル(大)
関連記事
大家さんと僕 これから 矢部太郎
なんていい話なんだ。泣いちゃったよ。
日本中がほっこりした、カラテカ矢部太郎さんと、彼が住む家の大家さんとのやり取り。
日本中の誰もが、見たことも会ったこともない大家さんに暖かい想いを寄せてい …続きを見る
北欧神話と伝説 ヴィルヘルム・グレンベック, 山室静
タイトルの通り、北欧神話と伝説を現地の研究者がまとめた本
どのエピソードも4ページくらいで終わり、めでたしめでたしとつくような内容で気軽に読める
主に口伝で残っている数々の伝説がまとめられています …続きを見る
POPEYE 2019年 11月号 [いま、聴きたい音楽ってなんだろう?] POPEYE
これはごっついですねえ…。素晴らしい。さまざまな人がオススメの音楽を紹介しているんだけど、そのオススメの音楽を編集部がSpotifyにプレイリスト作って全部ぶっこんで公開してるのね。2019年的な雑誌 …続きを見る
ザレゴトディクショナル 戯言シリーズ用語辞典 西尾維新
西尾維新ファン必見! という文字がこれほど当てはまる本があるでしょうか!!
戯言シリーズの副読本
戯言シリーズに登場するさまざまな名詞を西尾維新が解説
玖渚機関 みたいな固有名詞はもちろん、 …続きを見る
anna magazine vol.6 anna magazine
みんな大好きアンナマガジンです。今回は2015年に発売されたvol.6。まだフォトジェニックな写真が多いですね。でも初期の「素敵な写真でしょ! アメリカ最高でしょ!」的なキラキラアメリカ至上主義みたい …続きを見る
イラストノート Premium 窪之内英策のスケッチノート 窪之内英策, イラストノート編集部
一冊まるごと窪ノ内英策かと思ったら8割くらいだった。大特集・窪ノ内英策、その他企画ページや広告もアリ、みたいな感じ。
ONE PIECEのアオハルの設定画やインタビューは素晴らしかったけど、この表紙 …続きを見る
忍びの者 その正体 忍者の民俗を追って 筒井功
民俗学を研究している著者が、古文書などによって忍者の有様について考察している。4つのケースを元に忍者について考察しているが、その実態は戦国武者、支配層によって金銭で雇われた集団で、偵察や橋の寸断などを …続きを見る
江口寿史美人画集 彼女 江口寿史
江口寿史さんの彼女展に行きまして。江口寿史ってずーっと絵がうまいなあーすごいなあーと感銘を受けて5万円くらいする複製原画まで買ってしまいました。
江口寿史の絵って5年10年では消費されないところがす …続きを見る
我が愛と青春のたけし軍団 ガダルカナル・タカ
世間では「ビートたけしの金魚の糞で無能無芸の能無し集団」と誉れ高いたけし軍団。そんな彼らにファンはいるのかと言えば僕のように「ビートたけし大好きだけど、その偉大なる師匠の下で生息していた軍団の生い立ち …続きを見る