イラストレーター・なるめにとって初となる連載漫画『ILY.』が今春、最終回を迎えた。
おそらく商業媒体史上初、全編フルカラーのドット絵で描かれた『ILY.』は、鮮やかな色彩で見る者すべての心を惹きつける、なるめのイラストレーターとしての力が存分に発揮された作品だった。
『ILY.』を描く以前にもドット絵での漫画の制作を試みたことがあったそうだが、あまりの大変さに2コマ描いた時点で挫折したという。
そんな途方もない労力が注がれた『ILY.』に託した思い、さらには「人間性を出すのが下手」「思いを言葉にするのが苦手」と語るなるめさんに、自らの言葉で自分の人間性を語ってもらった。
これまでは自身から発信される作品やあとがきに含まれる僅かな情報からしか読み解けなかった「なるめ」という存在、そしてなるめさんの人間味が少しでも伝わったら嬉しい。
文・インタビュー/高橋数菜
――過去の同人誌お持ちいただいてすみません、ありがとうございます。同人のサークル名の『NEKURA』って由来はあるんですか。
「由来……特に深い意味はないんですけど、大学生だったときに春休み中に友達とまったく遊んだりしてなくて、春休みが明けて久しぶりに学校に行ったら、友達とどうやってしゃべっていたか分かんなくなっちゃって。『しゃべり方忘れちゃった』みたいなこと言ってたら、根暗じゃん、みたいな感じで言われて。キャッチーでいいなと思って。それから使ってます」
――今のサインにもNKRって入ってますね。
「名残です。最初ペンネーム自体にも入れてて。でもNKRまで名前として読まれるのがちょっとややこしかったので取りました」
――やっぱり今と絵がちょっと違いますね。
「かな。そうですね、もう5年ぐらい前なのか。いま手に取られているのは2017年の作品なので、結構前ですね」
――そのタイミングで同人誌を出そうと思ったのはどういった理由ですか?
「お友達のイラストレーターでふせでぃちゃんっていう子がいて、ふせでぃちゃんがうちの大学の先輩だったんですよ。それで、わたしはイラスト自体大学生のときからちょこちょこ描いてはいたので、学生時代にグループ展に誘ってもらったりしていて。ふせでぃちゃんが大学卒業をしたくらいで個展をたくさんやっているのを見て、私もちゃんとイベントに出たり個展をやってみようかなと思って始めたのがきっかけです」
――インタビューをさせていただくにあたって過去ツイートとかも拝見したんですけれど、数年前に仕事を辞めたって書かれていたんですね。その前ってなにをやられていたんですか。
「普通に会社員というか、ゲーム系の会社に勤めてて」
――すごい!
「そんな大きな会社ではないんですけど(笑)数年働いたんですが、自分の絵の活動にちゃんと本腰を入れたかったので辞めました」
――それってグラフィッカーみたいなお仕事ですか。
「2Dデザイナーだったんですが、イラストを描いていたわけではないんですよね」
――それは美大の専攻だった工業デザインから来てるんですか?
「いえ、それも全く違くて(笑)。いろいろぐちゃぐちゃなんですけど、大学時代はクラフト専攻だったので手で実際にものづくりをする感じの学科で……結局イラストは独学に近いです」
――美大って入るのめっちゃムズいって聞くじゃないですか。
「科にもよりますが、そうですね。一応デッサンとかはして、浪人もしたので」
――それって、お絵描きBBSで培った画力が活きてきたみたいな。
「そうなんですかね。お絵描きBBSは小学生ぐらいのときからずっと描いてて。でも受験のために予備校に通ったりしましたけれども、絵は個人でずっと描いてました」
――すごいですね。
「いえいえ。経歴がぐちゃぐちゃで、いつも人に話すと一貫性がなくて大変なんですけど(笑)」
――なるめさんってイラストだけじゃなくてHTMLも操れて。それで工業デザインもできて、ゲームの2Dデザインもできて。才能がいろんな方向に突出しててマルチですよね。
「どうかなあ……」
――そして漫画も描けるという。『ILY.』めちゃくちゃ面白かったです。『ILY.』の連載を終えられて、率直な感想をいただいていいですか。
「率直な感想……そうですね。無事終えられて良かったっていうのがいちばん大きいですね」
――やっぱり大変でしたか。
「そうですね。漫画自体を描いたことがほとんどなかったんですよ。最初に『N/A』のイラスト本をコミティアで販売してたときに、『ILY.』の担当さんから『漫画を描いてみませんか』っていうご連絡をいただいて。それで初めて『あ、やってみたい』と思って描いてみたので。連載を始めるにあたって、最初の打ち合わせのときに担当さんから『ぜひフルカラーでやっていただきたいんです』というお話をいただいて、自分ができるかできないかもよく分かってなかったけど、でもやりたかったので『やります』って受けて。実際やってみてめちゃめちゃ大変だったなっていうのが(笑)イラスト1枚描くのとはやっぱり違くて」
『N/A』©なるめ
――『N/A』が出てから連載が始まるまでの半年間はどういった準備をされていたんですか。
「最初にどんなのを描きたいですかって聞かれて、ちょっと考えてみますと言ってから、まずテーマをどうしようかなと毎日考えていて。私は見るものとしても恋愛ものが好きなんです。SF恋愛ものというか、普通の恋愛じゃなくて寂しい感じのロボットとかそういうのが好きで、そういうテーマで描きたいなっていうのがもともとぼんやりあって。なにかいいテーマはないかなって考えてたときに、フルカラーでアプリ連載でやるっていうことだったので、印刷を考えなくてもいい色選びができるっていうことをまず思って。なので、青色の印刷って難しいので、青色をきれいに出せるようなテーマで、女の子と海も描きたいなっていうのがポツポツ出てきて。ブルースクリーンっていうのがぱっと思い浮かんで。そこからいろいろ調べたりしてたところで、過去の『I LOVE YOU』ウイルス、『LOVELETTER』っていうのを知って。そこから始まった感じでした。なので、描きたいものをパパパッと挙げて、それに当てはまるのはなにかなって探してた感じでした。だから、すんなりテーマ自体はすぐ決まって。ただ、辻褄合わせというか、どうやって出会おうとか、どうやって感染しようとか、どういう結末にしようとかは連載しながら決まっていったことでした」
――I LOVE YOUウイルスって実在したウイルスなんですか?
「あ、そうです。メールでMP3とかJPEGのデータが破壊されちゃったりだとか。一晩でめちゃめちゃ感染が広がったりだとかで、ちょっと話題になったウイルスらしくて。名前もちょっと詩的というかいいなと思って」
――『ILY.』のタイトルだって、「I LOVE YOU」の各単語の頭文字からですもんね。
「そうですね。完全に元ネタのウイルスから来てますね」
――『N/A』が『ILY.』を描くきっかけとなった本って書かれてて、『N/A』の基になったF902iSという携帯電話のことを調べたんですよ。そしたら、液晶の色が『ILY.』の青色だったからこの青をイメージカラーにしたのかなと思ったんですよね。
「青色自体はエラーとかブルースクリーンのほうの青からきてます。F902iS自体はデザインがすごく好きで」
――この携帯にすごく思い入れがあるって書かれていたんですけど、いつ頃使われていた携帯なんですか。
「確か中高生の頃だったと思うんですよね。あの頃はまだスマホ出たてぐらいで、iPhoneを持ってる人は持ってるけど、まだガラケーが主流みたいな感じのところで。今ってiPhoneとかAndroid、デザインが似たものが多いですけど、ガラケーは個性的で自分の好きなものを選んでいる感じがあって。楽しかったなって思い入れもありますね」
――僕は『N/A』から発展させていって『ILY.』のストーリーを作ったのかなって思ってたんですけど、ほとんどゼロベースで自分の中から湧き出るもので作っていったんですね。
「そうですね、『N/A』もそうといえばそうで、人間と人間じゃない対象の恋愛や精神的な繫がりみたいなものがもともと好きで。『N/A』は擬人化というテーマだけど、もともと好きなことをおのおの描いた感じでしたね。雰囲気は似てると思うんですけど」
――雰囲気は似てるんですけど、『N/A』って切なさを綴った作品だと思うんですね。でも『ILY.』は切なさもあるんですけど、サスペンスの要素が多く入っていて、サスペンスどこから来たんだろうって思ってて。
「ふふふ(笑)そうですね。最初はもっと怖い感じになる予定だったんですけど、担当さんと打ち合わせしてるときに、怖過ぎる、読者が引くかもしれないみたいな言葉を何回か聞いて(笑)『そうなんだ、なるほど』と思って。そこからシフトチェンジというか、方向性が変わりました。最初は恋愛っぽくもなかったんですよ。サスペンスというか、昔の彼女になりすましたなにかに浸食されちゃって、周りの人も気付いたら浸食されているみたいな」
――ゾンビ的な。
「ゾンビ的な(笑)。誰も気付かないけど、それは本人たちにとっては幸せな世界みたいなものを最初は考えてたんですけど、ちょっと怖過ぎるっていう(笑)。出版社さんのカラーもあると思うので、もうちょっとかわいい方向性が欲しいかなっていうのを、私も実際思って」
――僕、『平成メモリーデイズ』辺りでなるめさんのことを知ったんですけど、今言ったサスペンス的なのが盛りだくさんな漫画が出てきたら、ちょっと引いてたかもしれないですね。
「そうですよね。これまで出してきた作品とは違っていたから、担当さんも『ILY.』の企画概要のテキストを持ってったときに意外な感じで、びっくりされてました」
――サスペンスものはお好きなんですか。
「んー……というわけでもない、なんだろう、私ちょっと感覚がずれてるのかもとか思ったりしてて。担当さんとのやりとりのときに『怖過ぎる』とか『読者が引くかもしれない』みたいなのを言われてから『そうなんだ、へえー』みたいな感じがあったので。あんまり私はホラーとかサスペンスっていうノリでは描いてなかったんですよ」
――僕、1巻の一番最初の「大好きって言って?」のコマで、『ひぐらしのなく頃に』っぽいなって思ったんですよね。日常が激変する瞬間というか。
「確かに確かに。ドキッとします」
――なるめさんって、なにに影響を受けてきたのか謎というか、『ときめきメモリアル』が好きっていうことは結構有名だと思うんですけれども、それ以外ってあんまり発信されてないと思うんですよね。『ILY.』を読む限り思ったことを言うと、多分ゲームが好きで、多分エロゲーもある程度プレイされてるんだろうなと思ったんですよね。
「エロゲーはやってないんです(笑)」
――やってないんですか。
「やってないんですよね、実は。グラフィックは見たりするんですけど、PC-9800の頃のとかはドットの使い方とかそういう点で見てはいたんですけど、実際にゲームそのものはやったことなくて」
――ちょっと意外ですね。
「確かに、こういう絵を描いていたらモロですもんね。昔のゲームの感じですもんね」
――特に昔のゲームに影響を受けたというわけでもないんですか。
「そうですね。私のこのタッチはお絵かき掲示板が基になってて、スーファミとか64とかゲームはそれなりにやってはいましたけど、あんまりこの感じのゲームはやってなかったですね」
――『ときメモ』にハマったのはなにがきっかけなんですか。
「『ときメモ』は小学生ぐらいのときだったと思うんですけど、人から借りたのか分かんないけど家にあって。なにをするゲームかもよく分かってなかったんですけど、主人公が男の子で、勉強したりとか部活入ったりするじゃないですか。なんとなく女の子としゃべるゲームという認識でやってたんですけど、絵がかわいいなっていうのはずっと思ってて。なんとなく忘れられなかったんですよ、特に内容は覚えてなかったんですけど(笑)。大人になってから、そういえば『ときメモ』をちゃんとやってみようかな、と思って、Vitaでアーカイブを買って1を最初にやって、それなりに1は楽しんだんですけど、2も買ってみようと思って、2をやったときにすごくハマって。2がいちばんすごくグっときましたね」
――女の子がいちばんかわいいのも2ですよね。
「やっぱりそうですよね(笑)」
――1は今見るとちょっと時代感が違いすぎるかなみたいなところがあって。2って古びないですよね。
「そうですね。2も絵柄的には古いんだと思うんですけど、人間としての魅力がそれぞれのキャラクターにちゃんとあって、今見てもかわいいって思えるなとか」
――『ときメモ』以外のギャルゲーはプレイされてないんですか。
「ギャルゲーは、『To Heart』とかやってみたかったんですけど、文字ベースのシステムがあまり合わず……。だったので、恋愛ゲームはほぼ『ときメモ』ですね。でもパソコンゲームじゃないですけど、あの頃Flashが流行ったじゃないですか。当時私はパソコンの中に新しい面白さみたいなのを感じてて。小学生のときに、ゲームとは違うけど自分のアクションで動くページだったりとか、ウェブサイトを個人で皆さん作っていらっしゃって、おのおの凝ったページもあったりして、そういうのを見て楽しんでたのが今の作風に大きいかなと」
――ちなみに、今まで影響を受けてきた漫画にしろゲームにしろ映画にしろストーリーものってあるんですか。
「『ILY.』でめちゃめちゃ影響を受けてるのは、『最終兵器彼女』ですね。すごい好きな作品で。それを初めて読んだのが中学生のときだったんですが、それが『ILY.』の中ではいちばん大きい気がします」
――当初に思い描かれていた、基生とアイリが一緒に電子の海に消えちゃうっていうエンディングも『最終兵器彼女』の影響が見えますよね。
「ところどころありますね。水族館に行った話を入れたのも、『最終兵器彼女』でちせとシュウジが水族館に行けなかったっていう話が入ってて」
――なるほど! 感動的です。アルっていう漫画のウェブサイトで、なるめさんを構成する5つの漫画っていうものがあって。そこでは『最終兵器彼女』のほかに『NARUTO』『ぼくらの』『放浪息子』『RAVE』を挙げられていて。これらの影響もあったりするんですか。
「と思いますね。『ぼくらの』は大学生ぐらいかな、ある程度大人になってから読んだんですけど、そのほかは小中高生のときに触れてめちゃくちゃハマっていた漫画なので、影響は知らず知らずあると思いますね」
――ちなみに、ほとんどが男性向けの作品だと思うんですけど。
「確かに!」
――少女漫画はあんまり読まれなかったんですか。
「そうですね。少女漫画はあんまり読んでなかったですね。わたし自身が男の子になりたいと憧れていた時期があって、それは小学生くらいでちょうど『放浪息子』の影響まんまって感じだったんですけど、そういうこともあってやっぱり女の子が主人公というよりも男の子が主人公の話のほうがグッとくるものがあったんです。男の子目線のかわいい女の子が好きだったんですね、多分。主人公とヒロインみたいな感じが好きだったんだと思います」
――あー! なるほど!
「ゲームもそうだし漫画もそうで、自分の作るものも大体主人公が男の子設定で、無意識にやってるのもありますね。今まで作った同人誌も全部そうですね(笑)」
――だからおっさん向けって言われたり。
「そうですね(笑)あれはなるほどと思いました」
――僕、なるめさんと6歳差で、通ってきたカルチャーが大体一緒だと思ってるんですね。だから、ガラケーに対する思い入れだったり、当時の個人サイトに対する思い入れだったりが似てて、僕にとっても特別な漫画というか。ここから『ILY.』の細かい「ここが好き」ポイントについて話していきたいんですけど、アイリってウイルスじゃないですか。ウイルスを作った人って、悪意とか目立ちたいとかがあってウイルスを作ると思うんですけど、ウイルス自体には悪意はなくてプログラムを実行しているだけというか。それなのに、ちゃんと基生に恋してる表情を描けてるなっていうのをすごい思って。
「ありがとうございます。表情は気を遣って描いてるところは多いですね」
――1巻って、アイリがプログラムに徹してる部分があるなというふうに思ったんです。1巻って強引に「大好き」って言わせようとしてるところがあったと思うんですけど、2巻の水族館のところって自然な流れで「大好き」って言わせようとしてて、成長してるのがいいなって思って。そういうのって意識されたりしたんですか。
「そうですね。話の中で1巻のうちは、得体の知れなさみたいなのを前面に出していきたかったので、アイリの心の描写とかは一切なく、なんなんだろうって思わせるような感じで描いていたのもあって。2巻からはアイリが『これじゃ駄目だ』みたいな、『このままじゃ基生は振り向いてくれない』っていう学習をして、ウイルスとしての成長なんですよね。水族館まではまだ基生への気持ちとかではなく、どうしたら『大好き』って言ってくれるかっていうのをウイルスとして成長したのが2巻のところ、ってイメージだったんですよ」
――江ノ島で初めてアイリの心の声が吹き出しとして出るじゃないですか。
「そうですね、そこからですね」
――これ以前のアイリはなにも考えてないというか、心の声はないっていう感じなんですか。
「そうですね。基生への思いはなくて、ウイルスとしてどうしたらいいかっていうのを考えて動いているっていうイメージです。ただ、『大好きってなんなの?』って基生に言われたときに、自分の中に答えがない質問をされて、改めてそこで自分の存在についてアイリが疑問を抱くっていう流れなんですけど」
――じゃあ僕、めちゃくちゃなるめさんの手のひらの上で転がされてますね。
「そうなんですよ。水族館ではまだアイリの心はないんですよ(笑)」
――そうなんですね。十屋カップルに八つ当たりするじゃないですか。八つ当たりも人間らしくていいなと思ったんですよ。
「それはウイルスとしてのアイリにとって邪魔だったからですね(笑)」
――めっちゃ手のひらの上で転がされてますね。
「そうですね(笑)」
――そうしてアイリが自我を持って、より人間的になっていったと思ったんですね。アイリが人間っぽくなってきたなと思ってたら、日々谷さんが出てきて、日々谷さんって人間的な欲望が駄々洩れのキャラじゃないですか。だから、アイリが人間っぽくなったのと、実際に人間である日々谷さんの描き分けがすごくて。やっぱりウイルスと人間は別の生き物なんだなってすごく思って。
「日々谷さんは割と……うーん……キャラをつくるという感じでもなく、自然と描けたキャラだったんで、本当に人間(笑)。キャラとして作ったというよりは、こういう子いるっていう感じで作ったキャラでした。なので、そうかも」
――日々谷さん、すごくいいキャラです。キャラというか、人間です。
「普通そうだよなっていう感じのキャラですね」
――あと次回への引っ張り方がめちゃくちゃうまいなと思ったんですけど、なんでこんなにうまいんですか。絶対に続きが読みたくなる感じになっていますよね。
「えー! いやでも担当さんに『どうしたらいいですかね』っていうのはめちゃめちゃ相談はしてて、『このときは基生にもっと別な心境があってもいいと思います』とか『基生とアイリの間に対立軸を作って、続きが気になるようにできるといいですね』みたいな感じのアドバイスをたくさんもらって。じゃあこうかなとか、そんな感じでやったので、割と担当さんと一緒に、『こんな感じでどうでしょうか』『めっちゃいいですね』みたいな感じで、ちょっと手探りでしたね」
――毎話引っ張りがうまいんですよ。今のお話を聞く限りだと『続きが気になるような感じになるといいですね』に対する答えを、なるめさんの中で出してるじゃないですか。だからたぶん、なるめさんが生み出した引っ張りだと思うんですよね。
「そうなのかな。でも1話はすんなり決まってたんですけど、3~4話ぐらいのときに一回自分の中でどうしようってなったときがあって、物語的に展開をしていかなきゃいけないけど、まだ2人の関係をゆっくり深めていきたいっていう気持ちもあったんですよ。なのでもうちょっと息をつけるような、日常回みたいなのも欲しいなとは思ってたんですけど、でも展開させていかなきゃいけないからどうしようかなって思ってて。3話の終わりは、ちょっとどうしたらいいんだろうと思ってたのが出ちゃってる気がするんですけど(笑)」
――そうなんですね。
「あはは、そうなんですよね。まだちょっと方向性が。アイリと基生が出会ったばかりだけど、関係性をどうやって深めていこう、って自分の中で悩みがあって。でも4話で方向性が自分の中でもガッチリ見えたなって感じだったので、よかったです」
――3話の終わりを描いてるときには、次がいきなりキスシーンで始まる可能性もあったわけなんですね。
「そうですね。3話は読者としての息抜き回みたいなのにしたかったのもあって、『ウイルス怖い』だけじゃない、日常っぽいのも出したいっていうのが3話で。そこからどうやってサスペンスにまた戻そうかっていうので悩んでたんですが。ほかのウイルスの存在を出そうっていうのは思って、それで4話がまとまりました。でも漫画としての次回への引きとかつなぎとか、そういうのを感覚として分かってきたのは2巻ぐらいからだなって思ってるんです。1巻まではすごい手探りだったので。2巻ぐらいからやっと漫画の描き方が分かってきた感じがありました」
――エンディングは連載を始めた段階で決めていたんですか。
「3巻のあとがきにもちょっと書いたんですけど、連載開始の段階で基生とアイリが消えちゃうエンドを目標としてプロットを組んでいたんですよ。なので、そこに向かって進むって感じで作ってたんですけど、途中で変わりましたね(笑)」
――そのプロットってどこまで決まってたというか、4話をすごい悩まれてたっていう話をしたと思うんですけど、プロットでは各話の大体の流れまでは決まってなかったんですか。
「大体の流れは決まってて、例えばアイリと基生が思い出の海辺で出会うとか、基生に『大好きってなんなの?』って言われたときに、アイリの中で変化が起こるとか、そういう大まかな流れはポンポンポンと最後まであったんですけど、それが何話に対応するとかではなくて、それまでのつなぎは各月ごとのプロットで埋めてくみたいな感じでした。なので、3話とか細かい日常回みたいなのはプロットになかったので、手探りでしたね(笑)」
――表紙を見る限り、1巻と2巻でアンテナの数が減ってたり、電池残量が1個減ってたり、最初から4巻ぐらいのストーリーがなるめさんの中でできてるのかなと思ったんですよね。
「そうですね、大体3~4巻ぐらいかなっていうのはもともとあって。3巻でちょうどよかったと思います」
――ちなみに、表に出てない裏設定みたいなものってあったりするんですか。
「裏設定……うーん……登場人物がめちゃめちゃ少ないので、出てるところは出てるんですけど。裏設定とはちょっと違うんですけど、個人的にやりたかったことがあって、『ILY.』っていうロゴを、最初は太い文字で『ILI.』にしてて、話が進むごとにこの文字が削られていって、IがYになる、『ILY.』になるっていうのはやりたかったんですけど。アイリのウイルスがワームっていう虫をイメージした名前が付けられているので、虫食いされたみたいな感じでロゴが『ILI.』だと思ってたのが、実はウイルスだったよっていう、そういうアニメーション的な演出をやりたかったんですけど、ちょっと漫画ベースじゃ難しいねってなってできなかったのはありました」
――でもそのアイデア、めっちゃ面白いですね。
「知らぬ間に徐々に削られていくっていう、ちょっと怖さもあっていいなと思っていたんですが」
――ゲームとかアニメとかだったら。
「そうですね。動くメディアであればできたかなって。これは担当さんにもやりたいっていう話はしてたんですけれど、画像じゃなくて文字で『ILY.』って出す場面がいっぱいあるからちょっと難しいかもしれないって言われて『確かにそうですね』ってなって、『ILY.』ロゴになりました。最初は、アイリのキャラクター自体のウイルス色が自分の中で強かったので、もっと怖い虫っぽい、本当は虫っていうか、基生には女の子の姿に見えてるけど、他人からはミミズみたいに見えるっていう設定を考えていたんですが、それは怖過ぎるって言われて(笑)、っていうのもあって。最初はもっと怖い感じで。裏話というか、ですけど」
――「大好き」っていう言葉がトリガーになったのって、なにか理由があるんですか。
「1話を描き終わった時点で『大好きだよ』というセリフが入ってたので、それをトリガーにしようって言ってくれたのは担当さんでした(笑)」
――3巻のあとがきに「大好きってなんなんだ」って書かれてたので、なるめさんの中で大好きっていう言葉がすごく謎の言葉だからトリガーになったのかなと思ったんですよ。
「それもありますね。恋愛観というか、『大好き』ってなんなんだろうなってたまに思うことがあって。それもあるといえばあるけど、それを漫画の中でトリガーにしようってなったのは、その担当さんの助言というか、『これいいんじゃないですか』って言ってくださって、そこでまとまっていったって感じでした」
――全然話変わりますけど、なるめさんって人に大好きって言えるタイプですか。
「あはは、うーん……今は言えますね、もう大人なので(笑)。昔はあんまりでしたけど。でも、言葉がほんとに苦手なんですよ。あとがきにも書いたんですけど、言葉で言ったことが本当にちゃんと相手に伝わるとは限らないじゃないですか。こっちの思ってる大好きと向こうの思ってる大好きの程度が違うので、それを言葉でちゃんと伝えるのって無理なんじゃないの? みたいな気持ちが常々あって、そういう『大好きってなんなの?』っていう思いは漫画の中でも出てきますけど、割と自分の中の疑問というか。大好きってなに? って訊かれてちゃんと答えれる人っているんだろうかとか思いました」
――僕の中で、なるめさんが思う大好きに対する答えってこれじゃないかなっていうのがちょっとあって、『ILY.』を描く以前にドット絵で漫画を描こうとしたけど2コマで断念したっていうのがあったと思うんですね。
「ありました(笑)」
ILY.みたいなドットで描く漫画を一度同人で出そうとしたことがあって、その時は2コマくらい描いていやこれは大変すぎて無理だ………って即諦めてたな
— なるめ/ILY.3巻 発売中 (@narumeNKR) August 27, 2020
――2コマで断念したものを月刊で連載できたわけじゃないですか。
「はい」
――だからなるめさんって、人に求められると自分の限界以上に頑張れる人なんだろうなと思ったんですよね。
「ああ……」
――だからコミティアとかイベントの締め切り前でも2日ぐらいなら徹夜できちゃうし、人に求められることで頑張れるタイプの人なんだろうなってすごい思って。なるめさんの中で「大好き」って、人に求められることなんじゃないかと思ったんですよ。だから基生もアイリに求められようとして頑張っているし、アイリも基生に求められようとするために頑張ってるんじゃないかなっていうふうに思ったんですよね。
「うーん! なるほど! そうですね……そうかもしれないですね……あんまり言葉にして聞くことがなかったので、今初めて言われて『あっなるほど』ってなってるんですけど。あるかもしれないですね。ドット絵で漫画を描くっていうのもひとりでは本当にできなかった。きっかけというか、やる気がというか……普段の仕事もちゃんと締め切りがあったほうがよくて、『いつでもいいですよ』とか言われるとあんまり手がつかなかったりするんですけど、それもありそうだなとか。恋愛じゃなかったとしても、自分を必要としてくれる存在がその人の活力になったりとか、そんな感じしますもんね。そういう人がいてくれると、期待に応えたいじゃないけど、自分ひとりで全部やるよりはやる気が出ますね、確かに(笑)」
――ドット絵で描くって、相当大変ですか。
「大変でしたね。ひとりで同人誌でやろうとしたときは、白黒で描こうとしてたんですけど、白黒絵も普段描いていたわけではなかったから、それもあって難しいっていうのと、あとは時間がすごくかかるんですよ、この絵。私、もともと描くの遅いんですけど。線をとにかく1pxのドットにしないと気が済まないんだけど、それをするとめちゃめちゃ時間がかかったので、ひとりでやるのはちょっと無理でしたね。今だったらできるかな。あのときはもともと漫画を描いていたわけじゃないし、白黒だったし、ドットで漫画を描いたことなかったし、って感じだったのもあって、完成しなかったんですけど、『ILY.』を描いたからそれなりに方法とか漫画の描き方とかも自分なりに『なるほど』と思ったところがあったので、今ならできるかなって感じです」
――『ILY.』がモノクロだったら描けてなかった可能性もあるんですか。
「描けてたかもしれないけど、私はあんまり楽しくは描けなかったかもしれないですね。やっぱり色があったほうがきれいだし、青色が使いたかったっていうテーマがもともとあったので」
――今までなるめさんが描いてきた作品って、昼と昼の海が多かったと思うんですね。『ILY.』では夜と夜の海が多いと思うんですが、夜を描くにあたってここに差をつけた、というポイントはありますか?
「昼って、周りの景色の中にいろんな光の色が見えてくると思うんですよ。海の青だけじゃなくて、砂の色とかコンクリートの色とか草の色とかいろんな色があるんだけど、夜の海って実際は真っ暗ですけど、絵の中でやりたかったのは青い海に全部染まって全部青くなるっていう。そういう表現をやってみたかったんで、ちょっと誇張というかわざと全部を真っ青にする」
――美しいですよね。めちゃくちゃ美しいです。
「ちょっと紙だとくすんじゃうんですけどね。現実的にはこうはならないけど、全部が青くなる海っていうのを描きたかったんです」
――3巻の最後のコマが昼の海じゃないですか。だから一気に世界が開けた感じがしてすごくいいエンディングだなって思ったんですよ。
「ありがとうございます。基生としても、暗い部屋の中から始まってる話だったので、昼の海で明るく終わりたかったっていうのがあって」
――最高です。ちなみに、第1話の基生の顔を大きく修正されたってあとがきに書いてあったんですけど、修正前の基生の顔も子どものまま年を取った感があって、それはそれでいいなって思ったんですよね。
「あれは単純に男の子を描き慣れてなかったので、描けてなかったっていう話なんですけど。今は見れないですね、ちょっと(笑)」
――男性ってこれまであんまり描いてこなかったと思うんですけど、男性を描くのって大変でしたか。
「最初はそうですね、1巻というか『ILY.』の連載が始まって3~4話とかまでは定まってないのもあって、手の入れどころがないというか。最初は基生を魅力的に描きたかったわけではなかったんですよ。なのであまりキャラっぽくもし過ぎたくなかったのもあって、キャラデザとかも映えないというか、普通の青年って感じなんですけど、難しかったですね。体つきとか服の感じとかサイズ感とかも私が普段描いてる女の子とは全然違うし。でも後半は基生のほうが描きやすかったですね」
――そうなんですね。
「はい。アイリの顔がずっと難しくて。アイリの顔は、下書きの時点でもかなり描き直したりしてて。手癖では描けなかったですね」
――男性キャラの心理を描くために勉強した、みたいなところってあるんですか。
「基生の心の中はそんな勉強したとかではなくて、こうなるだろうなみたいな、割と自分に近いところから出てる気もしていて。あんまり男性の心理としてとかでは考えてはなかったですね」
――基生となるめさんって近いんですか。
「うーん……どうかなあ……。でも私にいちばん近いのは日々谷さんだと思ってるんですよ(笑)。あんまり私は執着心ないんですよね。なので、基生みたいに何十年も同じ人を想うとか、そういうことはないんですけど。でもこれまで触れてきた作品の男の子たちの心情とか、そういうのが自然と出てる気はします」
――話を序盤に戻すと、画角と背景に正面と真横の画がめっちゃ多いと思ってですね。
「多いですね、めちゃめちゃ多いですね(笑)」
――それこそ3Dダンジョンのゲーム、『ウィザードリィ』とか『女神転生』とかそういうところから影響を受けてるのかなと思ったんですけど。
「どうだろう。それでいうと、『ときメモ』の背景画じゃないけど、絶対決め打ちの角度の絵ってあるじゃないですか。あれがやっぱり好きなのかな。無意識に描くとそうなるんですよね。人の目線の高さの背景みたいな。正面角度とかは、かなり手癖というか無意識のところでしたね」
――1巻は正面と真横がめっちゃ多いですけど、2巻は斜めとか斜め上とかの絵が入ってきて。
「漫画的に分かってきたときだったので(笑)。そうですね、その辺は意識的に変えたところですね。画面やカメラの動きを出したほうがいいなっていうのは、途中で気付いて」
――「『ILY.』は自分の好きなものを全部詰め込んだ作品です」ってツイートしていたと思うんですけど、基生の「基」はBUMP OF CHICKENをイメージしてしまうんです。
「そうなんです、大好きで(笑)そうなんですよ」
――「モトオ」とも読めますもんね。
「そうですね。藤君の影響です」
――前髪で目が隠れてるところとか。
「そうですね。それこそ中高生ぐらいのときにめちゃめちゃ好きで」
――ほかに僕が気付いていない、好きなもの詰め込みポイントってありますか。
「どうだろう。高橋さんが気付いてない好きな詰め込みポイント、どこだろう」
――ショートカットが、今まで描かれてきたショートカットと違うなっていうのは思ったんですよ。今までまん丸のショートカットが多かったと思うんですけど、アイリはちょっと違うショートカットで。
「昔感というか、基生にとっては愛理が10年前の姿の女の子の話っていうのもあって、ちょっとキャラデザを古めにと意識したのもあって。キャラ的にもちょっと抜けたおっとりした感じの子っていう設定があったので。ちょっとおとなしそうな感じで、セミロングで、っていうキャラデザにしましたね。それでいうと、日々谷さんがいつもの感じですね。いつもの女子って感じです、私の描く」
――なるめさんって自分の描いた漫画を拙いっておっしゃるじゃないですか。どの辺が拙いって思います?
「やっぱりちゃんと研究して描いた人じゃないから。うまくはないと思ってるんですよ。自分の話は好きですけど。でも漫画としてうまい下手だと、うまくはないので。初心者が描いた漫画だなとは思うんですよね」
――でも『進撃の巨人』って出た当初はいろんな人に下手だって言われてましたけど最初っからめちゃくちゃ面白いじゃないですか。だから、漫画的な勉強をしてないからといって拙いっていうのはちょっと違うと思っていて。だから『ILY.』もすごい面白いです。
「ありがとうございます。自分的にはすごい好きなんですけど、それは前提としてあって、でも一般的にあれかなっていう感じで、拙いっていう言葉を選びました」
――全然拙くないです。自信を持っていただきたいです。
「ありがとうございます」
――最後に月並みなんですけど、これまで『ILY.』を読んでくださった方にメッセージだったり、これから『ILY.』に触れる人にお薦めポイント、漫画のこういうところが面白いんで読んでください、みたいなものがあったら。
「えー! ……なんだろう……本当にありがとうございますっていうことなんですけど……そうだなあ……うーん……ちょっと待ってくださいね。うーん、なんだろう、もうちょっと具体的になにかしゃべれればいいんですけど。なんて言えばいいか分かんないんですけど(笑)言いたいことは結構描いちゃったからな、うーん……これは自分でやっぱり好きだなと思って描いてるけど。なんだろうな。お薦めポイントか。えー、なんだろう。なんだろうっていうか……。ちょっとすみません。なんか言葉が出ないな。なんでしょうね。私はすごいこれ好きって自分で思って描いてきたんですけど、それを言葉でプレゼンしなくてもいいためのこれ(『ILY.』)なんですけど。そうなんですよね。でも言葉にしないと伝わらないっていうのもめちゃめちゃ分かるので、なにかちゃんと言いたいんですけど」
――本当に魂削って描いたじゃないですけど、全部出しきった感がありますよね。
「そうですね。描きたいものを描けたなって感じでした」
――過不足ないというか、この作品の全部が詰まってるっていうか、「描き切ったな、なるめさん」っていう感じがします。
「ありがとうございます。未知の生命体との出会いもやりたかったし、ガラケーも描きたかったし、悲しい終わり方も描きたかったしみたいな、そういうのも全部描けて良かったですね。作品自体はめちゃめちゃ楽しんで描けて、本当に良かったですね」
――今のお言葉でばっちりだと思います。
「大丈夫ですか!?(笑)」
――はい。
「すみません、ほんと」
――ばっちりです。
「大丈夫ですか?(笑)うわー」
――はい。
「なんかすみません。全然しゃべれなくて」
――めちゃくちゃしゃべれてましたよ。
「書き起こしが大変なんじゃないかと思って」
――なにがですか(笑)。
「ちゃんとバチっと、これがこうだからこうでした、っていうのがあんまり言えなくて、なんとなくの感じで言っちゃったんで。記事になるのかな。大丈夫ですかね」
――めちゃくちゃ面白い記事になると思います。
「なりますかね、不安だ。ごめんなさい、ほんとに」
――あとやっぱり、なるめさんって謎なんですよ、人物が。でもその謎がちょっと解けるインタビューになってるんじゃないかなっていうふうに思います。
「なるほど」
――だからなるめさんっていう人物はこういう人なんだなっていうのがわかったらいいなっていうのがあって。
「そうなんですか。Twitterとかだと普段の感じをあまり出せなくて。ちょっと冷たい感じになっちゃうんですよ(笑)。全然そんなことないんだけど、Twitterとかでこの人間の感じを出すのが下手くそで。それがいいのか悪いのか分かんないですけど」
――それもなるめさんっぽいと思いますけどね。
「SNSは仕事も兼ねてるんですけど。でもやるからにはちゃんとプラスになることをしないとなとは思ってて。どういうことを考えてるとか分からないっておっしゃってたと思うんですけど。そういうのを出せてないんだったらやる意味ないんだよなあと思って(笑)。別に隠したいわけじゃないんですけど、文字にすると難しいんですよ、自分の感じを出すのが。かといって、しゃべりも上手じゃないんでスペースとかもやりたくないんですけど。でも、今って作品も見てもらえるけど、人間味も込みというか、どういう人が作っててというところに興味を持ってる人がすごい多いなって感じてて。そういうのを、自分が消費者側だったとしても結構見るんですよ、どういう人の作品なんだろうとか、興味があって見るところなんだけど、そういうのを自分が出す側だと出せてないっていう自分の中での課題があって。難しいんですよね、SNSとの付き合い方が」
――そうなんですよね。
「それもあって、私はウェブを自分できれいに作品を見れる場として作って、SNSはおまけ程度の立ち位置でいいかなって思ってるんですけど、見る側はやっぱりTwitterで見られるの手軽ですからね。どっちの気持ちも分かるんだけどなって感じなんですよね。うまくやれたらいいんですけどね、難しいです」
――これからなるめさんが商業媒体で漫画を描く予定ってあるんですか。
「描きたいとは思ってるし、担当さんとも『ぜひまた描きたいってなったら見せてください』みたいな感じにはなってるんですけど、具体的に何月何日までにとか、そういうのはないです。もうちょっと自分の中で絵の修行もしたいし、お話もちゃんとレベルアップしたいので。今すぐ次の作品とはなってないですが、本当にチャレンジをしたいですね、漫画」
――『ILY.』を描かれているときって『ガリベンガーV』の連載もあって、CDジャケットも手掛けられていて、この2年間って怒涛の日々でしたよね。
「そうですね。漫画が始まったくらいからちょうどいろんなイラストのお仕事をたくさんいただけるようになって、めちゃくちゃ怒涛の日々でした。全部重なって締め切りだらけのときがあって、そのときは精神的にもちょっとつらかったんですよね。漫画がとかじゃなくて、全部が重なったことによるつらさで、自分のせいなんですけど。なのでもうちょっと、次やるならスケジュール管理からやりたいですね(笑)」
――バッチリです、ありがとうございました。
「すみません、大丈夫ですか?」
――バッチリです(笑)最高です。
「大丈夫かな~。ありがとうございました」
information
ILY. - COMIC FUZ
https://comic-fuz.com/manga/2415
なるめ個展「オーバーライト(※仮)」
日程:2022年8月5日(金)~17日(水) ※木曜休廊
時間:12:00~20:00(最終日は17:00まで)
場所:Alt_Medium
東京都新宿区下落合2-6-3 堀内会館1F
https://altmedium.jp/